
WMS(倉庫管理システム)の導入にあたっては、パッケージ型にすべきかフルスクラッチ型を選ぶべきかという点が重要です。それぞれの方式には、導入コストや期間、カスタマイズ性、将来的な拡張性といった観点で明確な違いがあるため、どちらを選ぶかによってその後の運用成果が大きく左右されます。
そこで本記事では、WMSのパッケージ型とフルスクラッチ型、それぞれの特徴やメリット・デメリットを比較しながら、自社にとって最適な選定のポイントをわかりやすく解説します。
APTの物流システム開発ソリューション「WMS・WCS・WES」
目次
WMSのパッケージ型とフルスクラッチ型とは
WMSの導入方法には大きく分けて「パッケージ型」と「フルスクラッチ型」の2種類があります。どちらを選ぶかによって、導入コストや期間、運用の自由度に大きな違いが生じます。
そのため、ここからは両者の違いをわかりやすく整理しながら特徴を解説します。
パッケージ型とは
パッケージ型のWMS(倉庫管理システム)は、すでに開発された汎用的なシステムを導入する方式です。あらかじめ多くの機能が搭載されており、導入企業はその中から必要な設定を選び、自社業務に合わせて調整して使います。
開発期間が不要なため、短期間での稼働開始が可能で初期費用も比較的安価です。また、導入実績が豊富な製品であれば、サポート体制も整っており安心感があります。ただし、既成の仕様に業務を合わせる必要があるため、特定の業務フローにフィットしない場合や、細かなカスタマイズが難しいケースもあります。
フルスクラッチ型とは
フルスクラッチ型のWMSとは、ゼロから自社専用のシステムを開発する方式です。業務フローや商品特性、取扱量など、自社の物流現場に最適化した設計が可能で、必要な機能だけを精密に構築できます。複雑な業務プロセスや将来の事業拡大、マテハン機器との連携などにも柔軟に対応できる点が大きなメリットです。
一方で、要件定義から設計・開発・テストまでの工程が必要なため、導入までに時間がかかり、初期コストも高くなる傾向にあります。
WMSパッケージ型のメリット・デメリット
導入のしやすさやコストパフォーマンスの面で注目されるのがパッケージ型WMSです。標準機能が整っており、すぐに稼働できる点が魅力ですが、その反面、柔軟性や業務適合性には制約もあります。
そこでここからは、パッケージ型のWMSが持つ利点と課題の両面をわかりやすく解説します。
メリット
パッケージ型WMSの最大のメリットは、導入のしやすさとコストの抑えやすい点にあります。あらかじめ開発された汎用システムのため、要件定義から開発までの期間が短縮され、早期の稼働が可能です。
また、多くの企業に導入されている製品であれば、運用実績やノウハウも豊富で、サポート体制が整っている点も安心です。加えて、多くのベンダーが製品を提供しているため、業種や規模に応じたWMSを選びやすいという利点もあります。
初期投資を抑えたい、リスクを小さく始めたい企業にとって適したソリューションと言えるでしょう。
デメリット
パッケージ型WMSには、カスタマイズ性の制限というデメリットがあります。基本的には既存の機能をそのまま利用するため、自社独自の業務プロセスに完全に合わせることが難しく、業務をシステムに合わせて変更する必要が生じることもあります。
また、業務が変化した場合の柔軟な対応も難しいことが多く、将来的な事業拡大やマテハンの導入といった場面で、システムの限界が足かせになる可能性があります。こうした制約を踏まえ、単なる初期コストや導入スピードだけでなく、中長期的な運用面での適合性も見極めることが重要です。
WMSフルスクラッチ型のメリット・デメリット
自社業務にぴったり合ったWMSを構築できるのが、フルスクラッチ型の大きな強みです。業務の特性や成長戦略に応じて自由に設計できる一方で、導入までのハードルも高くなります。
そこでここからは、フルスクラッチ型の魅力とともに、導入に伴う注意点についても詳しく解説します。
メリット
フルスクラッチ型WMSの最大の魅力は、業務に完全に適合したシステムを構築できる点です。ゼロから開発することで、自社の物流フロー、商品特性、取引先の要望に至るまで、すべての要件に沿った設計が可能になります。
また、機能追加や変更も柔軟に対応できるため、将来的な事業拡大やマテハン機器の導入といった環境変化にもスムーズに対応できます。他の社内システムや外部サービスとの連携も自由に設計できるため、全体最適の実現に近づけます。
業務に最適化されたWMSを活用することで、大きな業務効率化やサービス品質向上が見込めるメリットがあります。
デメリット
フルスクラッチ型WMSには、自由度の高さの裏側にはデメリットも存在します。まず、システムを一から開発するため、初期費用が高額になりやすく、要件定義から実装・テスト・導入までの期間も長期化します。
加えて、開発途中での仕様変更や不具合発生のリスクも高く、プロジェクト管理には高い専門性が必要です。また、導入後の運用・保守についても、パッケージ型のような一律のサポート体制はなく、自社で体制を整える必要があります。
開発ベンダー選びに失敗すると、スケジュール遅延や品質トラブルが発生し、想定以上のコストが発生するおそれもあります。こうした課題を回避するには、信頼できる開発パートナーと綿密な連携を取ることが必要不可欠といえるでしょう。
自社に合ったWMSの選定ポイント
WMSの選定において重要なのは、単なる導入コストの比較ではなく、自社の業務内容や将来的な展望を踏まえた判断が重要です。
そこでここでは、自社要件やリスク許容度といった観点から、どちらの方式がより適しているのかを見極めるためのポイントを解説します。
自社の要件や予算
WMSを選定するうえでまず重要なのは、自社の業務要件と予算を明確にすることです。標準的な業務で構成されており、スピーディーな導入や初期費用の削減を優先したい場合は、パッケージ型の方が適しています。
一方で、複雑な業務フローや特殊な取扱商品、既存システムとの連携が不可欠な場合は、柔軟に設計できるフルスクラッチ型のほうが長期的に見て効果的です。初期投資だけでなく、運用コストや拡張性も含めて総合的なコストパフォーマンスを検討することが大切です。
リスク許容度
WMS導入においては、予算だけでなくリスク許容度も大きな判断材料となります。パッケージ型は完成されたシステムを使用するため、導入リスクや運用トラブルが少なく、比較的安全にスタートできるのが特長です。
一方、フルスクラッチ型は高い柔軟性を持つ反面、開発の遅延や品質のバラつきといったリスクを伴います。こうしたリスクを許容できるかどうか、またそれに見合う成果を見込めるかが重要です。
まとめ
WMSのパッケージ型とフルスクラッチ型には、それぞれ異なる強みと課題があります。導入のスピードやコストを重視するならパッケージ型、業務への最適化や将来的な変化への対応力を重視するならフルスクラッチ型が適していると言えるでしょう。
WMSは単なるITツールではなく、業務効率化やサービス向上の基盤です。WMSを始めとした物流システムを提供しているAPTのように現場理解に長けたパートナーと連携しながら、自社の要件・リスク・成長性を見据えた最適な選定を行うことが大切です。
APTの物流システム開発ソリューション「WMS・WCS・WES」
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