商品や物品を保管する商業用倉庫の中には、倉庫業法によって登録を受けた業者が運営している「営業倉庫」と、卸売業者などが自社の物品を保管する目的の「自家用倉庫」に分かれています。
それぞれの倉庫には役割や目的が明確に分かれているため、運用するに当たっては事前に理解しておくことが重要です。そこで本記事では、営業倉庫と自家用倉庫の違いを解説するとともに、倉庫業法で定められている営業倉庫の種類について解説します。
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目次
営業倉庫とは
営業倉庫とは、倉庫業法によって国土交通大臣の登録を受けた倉庫業者が、他人から物品を預かり保管する目的で運営されている倉庫のことを指します。なお、登録には倉庫業法の規定に沿った防火対策や防塵対策をクリアしなければなりません。
国土交通大臣の登録認定を受けた業者しか運営ができないため、未登録での営業には罰則や罰金が課せられます。加えて、未登録の運営で火災などの事故が発生した場合、火災保険が適用されませんので注意しましょう。
営業倉庫と自家用倉庫の違い
第三者から荷物や商品を預かる目的で運用されている営業倉庫に対し、自家用倉庫は自社の商品を保管する目的で運営されている倉庫になります。例えば、製造業者や卸売業者が、自社工場で生産した製品を一時的に保管するようなケースで活用されています。
そのため、自社が所有する敷地内に併設されていることが一般的で、外部委託するよりも配送までのリードタイムが短縮できるなど、メリットの多い運用形態のひとつです。
営業倉庫の種類
営業倉庫は、倉庫業法(倉庫業法施行規則第3条)において、保管する商品や管理方法の違いによって種類が分けられています。
そこでここからは、営業倉庫の代表的な種類や特徴について解説します。
一類倉庫
営業倉庫の普通倉庫業に分類される「1類倉庫」は、建屋型営業倉庫とも呼ばれており、多くの普通倉庫が該当するタイプの倉庫形態です。導入されている設備や建屋の構造基準がもっとも高い水準の倉庫で、非常に幅広い種類の荷物を保管できます。
主な保管品としては、日用品や繊維、紙やパルプ、電気機械など、第1類から第5類物品に該当する製品を保管する目的の倉庫です。
二類倉庫
1類倉庫と同じく普通倉庫業に分類される「2類倉庫」は、1類倉庫の設備要件でもある「耐火性能」を除いた倉庫形態です。そのため、基本的に燃えやすい物は保管できないのも大きな特徴と言えるでしょう。
なお、保管品としては、デンプンや塩、肥料にセメントといった第2類から第5類に該当する物品が保管対象となります。
三類倉庫
1類2類倉庫と同じく普通倉庫業に分類される「3類倉庫」は、2類倉庫よりもさらに設備要件が緩和されている倉庫形態です。耐火性能に加えて、防湿性能も要件から除かれているため、湿気や気温変化などに弱い物品は保管できません。
そのため、基本的な保管品としては、ガラス類や陶磁器、鉄材といった第3類から第5類に該当する物品が保管対象となります。
野積倉庫
普通倉庫業に分類される「野積倉庫」は、周囲に塀や柵、鉄条網で保護されており、消火設備や防犯設備などの照明装置が設置されていることが、設備要件として必須条件の倉庫形態です。
野積倉庫で保管する物品は、風や雨、太陽光などの影響を受けない物とされています。そのため、鉱物や土石、原木などの原材料や、レンガや瓦などの第4類から第5類に該当する物品となります。
水面倉庫
水面倉庫業に分類される「水面倉庫」は、原木などの木材を河川や海などの水面で保管する目的で運用されている倉庫形態です。保管する物品が流出するのを防ぐために、周辺に築堤などで防護する必要があります。
なお、水面で保管する目的となっているため、木材以外の製品は対象となっておらず、第5類物品に該当する原木のみが保管対象となります。
貯蔵槽倉庫
普通倉庫業に分類される「貯蔵槽倉庫」は、タンクやサイロで保管する倉庫形態です。設備基準として、防水防火性能に加えて、底面強度が3,900N/㎡以上、側面強度が2,500N/㎡とされており、必要に応じて防火区画の設置や災害防止措置を施す必要があります。
なお、保管する製品としては、液体やバラ穀物などの第6類物品や、第1類から第2類物品に該当するバラ物品が対象となります。
危険品倉庫
普通倉庫業に分類される「危険品倉庫」は、消防法に基づく危険物を保管するための倉庫形態です。主に第7類物品に該当する危険物や、高圧ガスなどを保管する目的となっているため、必要に応じて塀や柵、鉄条網といった防護措置をしなければなりません。
なお、保管する危険物の種類によって、消防法や高圧ガス保安法に加えて「液化石油ガスの確保及び取引の適正化に関する法律」に沿った規定を満たしている必要があります。
冷蔵倉庫
水面倉庫業に分類される「冷蔵倉庫」は、農畜水産物の生鮮品及び凍結品等の加工品など、10℃以下で保管することが適当な物品を保管するための施設です。主に第8類物品に相当する生鮮品などを保管することが目的となります。
そのため、設備要件としては、保管温度が常時摂氏十度以下に保つ必要があるため、国土交通大臣の定める基準を満たしていなければなりません。
トランクルーム
普通倉庫業に分類される「トランクルーム」は、主に家財や骨董品などの個人財産を保管するための施設とされています。通常のトランクルームとは違って、一定の品質が確保されている国土交通大臣の認定を受けている施設で「認定トランクルーム」や「優良トランクルーム」とも呼ばれています。
定温性能や防塵性能、防虫性能など、さまざまな要件をクリアしている保管施設になるため、安全かつ安心に荷物を預けることができるのも大きな特徴といえるでしょう。
営業倉庫で注意しておきたいポイント
非常に細分化されている営業倉庫になりますが、運用をするためにはいくつか注意しておかなければならない点が存在します。
・営業倉庫は登録制
・運用には一定のリスクがある
まず、営業倉庫の運用を構築するためには、倉庫業法における国土交通大臣の認定登録を受けなければなりません。無許可で運営した場合には「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金」が科せられることになります。
加えて、登録がされていない状態で広告などを出稿することも認められていないため、違反した場合には「50万円以下の罰金」が科せられることもあります。
このように、営業倉庫の運用には非常に高いハードルがある以外にも「保管責任」が発生するため、何かしらのトラブルが発生した際には倉庫業者が責任を負う必要があります。以上のことからも、運用には一定のリスクがあることを理解した上で、事業整備をしていきましょう。
まとめ
営業倉庫は国土交通大臣の登録を受けた倉庫になるため、非常に厳しい基準をクリアした保管施設になります。なお、自社製品を保管するための目的として運用されている自家用倉庫とは違って、第三者の荷物・製品を保管する目的となっており、保管目的や物品規定によっても営業倉庫の種類は細分化されています。
倉庫業法において、荷主に対して不利益が発生しないように厳格なルールで運用する必要があります。そのため、事業運営を検討している場合には、倉庫業法の内容も把握した上で事業整備を整えましょう。