導入事例
自動倉庫を新設。
製造ラインとの連携を図るシステムを導入。
未曾有の震災を乗り越えて
福島県郡山市・京セラ株式会社 福島郡山工場
(取材:2014年7月実施)
福島県郡山市にある、京セラ株式会社 福島郡山工場。
自動倉庫を新たに新設し、製造ラインとの連携を図るシステムを導入。
2011年3月11日に発生した震災による、福島原発事故の被害を乗り越え、被災地だからこそ生まれた環境への配備を行い稼働する福島郡山工場。
今回は、自動倉庫新設に至るまでのお話などを伺いました。
郡山工場について
弊社:福島郡山工場について詳しくお聞かせください。
前澤様:福島郡山工場は封止材を主に製造しています。2012年に完成した技術棟では、様々な製品に対応する封止材を開発する機能があり、多くの製品に当社の封止材が使われています。京セラグループで唯一有機化学の材料を取り扱っている工場です。福島郡山工場は東北自動車道や磐越自動車道など、道路環境や自然環境に恵まれた場所にあります。メガソーラーを導入し、CO2削減を図るなど、環境配備にも積極的に取り組んでいます。
弊社:封止材は日常生活で馴染みのないものですが、どんな役割の部材ですか?
前澤様:家電製品や自動車などに使われている半導体等を保護するための材料です。
最近ではスマートフォン向けの封止材が多く製造されています。また、多様な用途に使用できる材料として多くの企業から採用頂いています。
京セラについて
弊社:京セラ様はどのような企業ですか?
前澤様:当社は京セラグループ234社の1グループ企業です。
本社は埼玉県川口市にあり、国内工場は川﨑・真岡・福島郡山の3拠点で展開しています。
また、海外にも拠点があり、シンガポールでも封止材を扱っています。
支店は関西と九州にあり、その他全国的に営業拠点を展開しています。海外拠点については、中国の無錫・香港・シンガポールにあります。アメリカやドイツには営業拠点があります。
大震災時の対応
弊社:東日本大震災では、東北地方は甚大な被害に見舞われました。福島郡山工場も被害が大きかったのでしょうか?
橋本様:非常に大きな震災でしたので、被害も大きく、ラインを停めました。倉庫の中では原材料などが落下し、復旧させるために苦労いたしましたが、震災から5日後には稼働を再開することができました。
中村様:5ヶ月はフル稼働で製造できるだけの原材料は確保していたので、製造計画に何とか間に合わせることもできましたが、他のエリアからも様々な援助があって対応できたものでもあります。
弊社:ライン停止以外のご苦労はどういった点が挙げられますか?
前澤様:まずは従業員です。少ないガソリンの中、フル稼働するために協力しあいながら出勤を行いました。従業員同士、自家用車を乗りあって出勤し、何とか稼働を行っていました。道路も場所によっては寸断されているところもあり、協力なくしてはフル稼働はできなかったと思います。そのほか、完成品を安全な場所へ移動させたり、震災直後は様々な対応に追われる日々でした。
中村様:出荷に関しても、ガソリン不足等によりトラック手配ができなかったり、原発事故により海外出荷の際、放射線量の数値を細かく報告する必要が出てくるなど、通常では考えられない対応が多かったです。
海外のお客様は、今回の原発事故を非常に重く捉えていて、且つ製造ライン・出荷が福島県ということもあり、かなり厳しい要求が多く、対応に追われました。
自動倉庫の活用を考える
弊社:自動倉庫を導入しようとしていた背景はどのようなものなのでしょうか?
橋本様:工場の設計思想が、中央に自動倉庫を配置して原材料・資材・半製品・製品の倉庫機能を持たせるとともに、各工程間を結ぶ搬送装置としてハンドリングの中枢を担うものとなっていました。
中村様:工場落成から暫くの間は、自動搬送対応していましたが、システムの不具合や経年劣化等による故障が発生し、自動搬送の機能が使用できなくなりました。
当然、入出庫に関しては、一部手動操作で行わなければならなくなり、作業効率が悪い状況でした。
また、在庫管理も導入当初はシステムを活用していましたが、工程変更に対応しにくいことや不具合などが重なり、管理の為に膨大な手間と時間が必要な状況になりました。そこで今回、搬送効率や在庫管理を飛躍的に向上させるために自動倉庫クレーンと汎用システムの導入に踏み切りました。
弊社:自動倉庫・在庫管理システムを新たに新設し、どのように改善されましたか?
中村様:一か所の端末管理だったため、移動の時間が多く取られていました。導入により、作業者は担当工程に配置された端末で入出庫操作を行えるため、倉庫へ行く移動時間などが短縮できました。
また、棚卸の作業時間についても、短時間でデータを確認することにより大幅に削減できております。
弊社:今回はラック以外の設備を新設いたしましたが、この方法を選ばれたのはどういった理由からですか?
橋本様:工程間の搬送装置を兼ねている自動倉庫でしたので、長期間使用できないことは大きな痛手でした。最低限の工期で完了し、且つ通常の生産体制に早急に復帰させる必要がありました。少しでも工期を短くするためにはどうすれば良いのか?と考えた結果、今回の方法が一番早く、そして必要な機能が揃っていたという点で決定しました。
弊社:導入当初のメーカー以外を採用するきっかけはどういった内容からですか?
橋本様:導入当初のメーカーはすでに自動倉庫事業から撤退していましたので、別のメーカーをさがさなくてはならない状態でした。今回導入の際に拘りたかった点は、メンテナンスや更新時に大きな障害となるブラックボックスが無いことや、経年劣化による部品交換の際に調達で悩むことがないよう汎用品で構成されている事でした。
様々なメーカーからも情報収集した結果、APTはコストパフォーマンスも良く、当社で検討時に拘った点に対応できると感じたので採用を決めました。
自動倉庫の新設についてはこちら
自動倉庫のリニューアル・メンテナンスについてはこちら
APTに期待したいことは?
弊社:今後弊社に期待されたいことはどういった点ですか?
橋本様:自動倉庫リニューアルのノウハウを活かし、長期的なサポートをおねがいしたいです。
また、今後更新やリニューアル時期を迎えた際にも、ブラックボックスレスの仕様を活かして、優れた且つ安価な投資で改善できるような協力をお願いしたいと思います。
編集後記
メガソーラーパネルを見学しました!
福島郡山工場へ入る前に目に入ったのが、この広大なメガソーラーパネル。
写真では全体を撮影する事が難しかったのですが、その数は6,000枚以上もあり、京セラグループ各拠点に設置してある中で一番大きな太陽光発電施設となっています。
広いメガソーラーパネルを一望できる展望台は、心地よい風が吹き抜け、福島の山々も一望できる見晴らしの良い場所でした。
ここで集められた太陽光が、皆さんが使っている電力となっています。
福島郡山工場の周辺には、東北自動車道が通っており、また磐越自動車道も近いことから、利便性の高いロケーション。近隣には観光地もあり、歴史的建造物や温泉地、冬にはスキーなど、オン・オフどちらも対応できるエリアです。未曾有の震災から早3年経過しました。震災からの復旧ももちろんですが、原発事故後の出荷対応に苦労された内容など、普段見えない部分をお聞きすることができました。まだ震災の爪痕が大きく残る東北。
福島含め、東北エリアがもっと元気になってくれたらいいな、と願わずにはいられません。
京セラ株式会社 福島郡山工場の皆さま、貴重なお時間をありがとうございました!
ユーザー様ご紹介
京セラ株式会社 福島郡山工場
福島郡山工場では、封止材の製造を行っています。京セラグループの中で唯一有機化学の材料を取り扱っている工場です。
技術棟をもつ福島郡山工場では、製品開発も行うなど、お客様のご要望に合った様々な材料の開発・製造しています。
(詳しくは、京セラ株式会社ホームページをご覧ください。)
●名称:京セラ福島郡山工場太陽光発電所
●面積:24,000㎡
●設置容量:1.5MW
●使用モジュール枚数:6,216枚
●年間発電電力量:一般家庭約430世帯相当分
※電力量は年間約1,564,000KWhを想定。
所在地:福島県郡山市待池台2-17
JR東北新幹線『郡山駅』より福島交通バス『西部第二工業団地』行き約45分
※バス利用の場合は、『京セラケミカル前で下車』を運転手にお声がけください。
URL:http://www.kyocera-chemi.jp/