
在庫管理において、定量発注方式は欠品のリスクを減らし、業務効率化を図れる発注方法として注目されています。しかし、定期発注方式との違いや、実際にどのような場面で活用すると効果的なのかを正しく理解している方は多くありません。
そこで本記事では、定量発注方式とは何かを基本から解説しつつ、メリットやデメリット、さらには効率的に運用するためのポイントについて詳しくご紹介します。在庫管理を改善して業務の最適化を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
目次
定量発注方式とは?
定量発注方式は、在庫管理の効率化を目的とした発注方法のひとつです。在庫が設定した一定量(発注点)を下回った時点であらかじめ決まった数量を発注するというシンプルな仕組みですが、正しく理解することで欠品リスクの低減や業務効率化につながります。
そこでここからは、定量発注方式の基本的な仕組みや、混同されやすい「定期発注方式」との違いについて詳しく解説します。
基本的な仕組み
定量発注方式とは、在庫があらかじめ決められた一定の数量(発注点)を下回った時点で、あらかじめ設定された一定の数量を発注する在庫管理方法のことを指します。
具体的な仕組みとしては、まず事前に在庫の最低基準を設定します。この最低基準まで在庫が減少したら、一定数量の在庫を補充します。例えば、「在庫が100個を切ったら毎回300個を発注する」というように、発注タイミングが明確化されることが特徴です。
この方法は発注のタイミングは常に在庫数に依存するため、発注周期は一定にならず、商品消費のスピードによって異なります。
定期発注方式との違い
定量発注方式と定期発注方式の最も大きな違いは、発注のタイミングと発注量の考え方にあります。定量発注方式では在庫量が一定の基準を下回った時点で一定数量を発注しますが、定期発注方式では毎回決まった周期で在庫量を確認し、その都度必要な量だけを発注します。
つまり、これらの方法は「数量」で管理するか「周期」で管理するかという点で異なるということです。どちらの方法が適しているかは、取扱商品の特性や需要変動の安定性などにより異なります。
定量発注方式のメリット
定量発注方式を採用すると、在庫管理の効率化や人的ミスの削減、さらには欠品リスクの軽減など、さまざまなメリットが得られます。特に在庫管理業務に課題を抱える企業にとっては、業務改善やコスト削減に直結する重要な方法といえるでしょう。
そこでここからは、定量発注方式がもたらす具体的なメリットについて詳しく見ていきます。
在庫管理の効率化
定量発注方式を導入すると、在庫が設定した基準以下になった段階で自動的に一定数量を補充するため、在庫管理業務がシンプルになります。担当者は常に在庫量を確認したり、毎回の発注量を計算したりする手間がなくなるので管理業務の負担が軽減されます。
また、発注のルールが明確になることで業務が標準化され、システム化や自動化もしやすくなります。その結果、時間や人的コストが削減され、生産性や業務効率の向上にもつながります。
人的ミスの低減
定量発注方式では、発注する数量やタイミングがあらかじめ決まっているため、担当者の管理業務の負担が少なくなります。これにより、発注漏れや数量入力ミスなど、人的エラーのリスクを大幅に低下させることが可能です。
一方、取り扱い商品数が多くて複数の担当者が関与するような状況では、人為的ミスが発生しやすいです。そのため、定量発注方式の導入による業務の標準化と簡略化は、正確な在庫管理の実現という面でもメリットがあります。
欠品リスクの低減
定量発注方式の特徴は、在庫数が設定した最低水準に達した時点で遅滞なく一定量の在庫を補充する仕組みにあります。これにより需要が一定の商品の場合、欠品や品切れのリスクを最小限に抑えることができます。
販売機会を逃すことなく顧客ニーズに対応できるため、顧客満足度の維持や向上に役立ちます。さらに安定的な商品供給が実現されることで、企業の信頼性や競争力を高める効果も期待できます。
定量発注方式のデメリット
メリットが多い定量発注方式ですが、一方で需要の変動に柔軟に対応できないなどのデメリットや注意点も存在します。運用を成功させるには、これらのデメリットを十分に理解し適切に対策を講じることが必要です。
そこでここからは、定量発注方式が抱える主なデメリットとその背景について掘り下げて解説します。
需要変動に対応しにくい
定量発注方式は、需要が一定で安定していることを前提としています。そのため、急激な需要の増減や季節的な影響など、予測が難しい需要変動に対して柔軟に対応できないという課題があります。
設定した基準と実際の需要にギャップが生じると、欠品や過剰在庫が発生する可能性が高まります。そのため、市場環境が頻繁に変化する業界や季節性の高い商品を扱う場合には、注意深く検討し、必要に応じて他の管理手法を併用することが重要です。
過剰在庫・在庫不足のリスクがある
定量発注方式では、発注点や発注量の設定が適切でない場合、過剰在庫または在庫不足が起きるリスクがあります。発注点を高めに設定すると過剰在庫となり、余分な倉庫スペースや在庫維持コストが発生します。
一方、低めに設定すると在庫不足となり、販売機会の損失や顧客満足度の低下を招くことになります。これを防ぐためには、定期的な需要予測の精度向上や発注基準の見直しを行い、状況に応じて柔軟に調整する必要があります。
以下の記事では、過剰在庫が起きる原因や対策方法について詳しく説明しております。
発注点の設定が難しい
定量発注方式を効果的に運用するには、適切な発注点の設定が不可欠ですが、この設定が非常に難しい場合があります。発注点を正確に設定するには、過去の販売実績、需要予測、納品リードタイムなどの多くのデータを正確に把握し、それらを綿密に分析する必要があります。
商品数が多い企業や市場環境が頻繁に変化する業種では、専門的な知識と経験を持った担当者や管理システムの導入が必要になるでしょう。
定量発注方式を効率化するポイント
定量発注方式を効率的に運用するには、正確な需要予測や定期的な発注基準の見直しが欠かせません。過去の販売データを継続的に分析して需要変動の傾向を把握し、それに基づいて発注点や発注数量を調整することが大切です。
また、在庫管理システムを導入することで、発注プロセスを自動化・標準化することも重要なポイントです。発注業務をシステム化することで、人的な判断ミスや作業漏れを防ぎ、管理業務の負担を大幅に軽減できます。
さらに納品までのリードタイムを正確に把握し、それを考慮した余裕のある発注基準を設定することも大切です。これにより欠品リスクをさらに低減し、定量発注方式の効果を最大限に引き出すことが可能になります。
まとめ
定量発注方式は、適切に運用することで在庫管理業務を効率化し、コスト削減や欠品防止といった多くのメリットをもたらします。ただし、需要変動への対応や発注点設定の難しさといった課題も存在します。
自社の商品の特性や市場状況に合わせて、定量発注方式のメリットを最大限に引き出せるよう、継続的な分析と運用の見直しを行うことが重要です。在庫管理システムを用いて業務の最適化をすることで、企業競争力を強化させましょう。
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