
近年、少子高齢化による人手不足の深刻化や、多品種少量生産への対応、さらには安全で効率的な生産ラインの構築を目的に、多くの企業が協働ロボットに注目しています。一方で、協働ロボットはどのような仕組みなのか気になっているという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、協働ロボットの基本的な仕組みや産業用ロボットとの違いを詳しく解説するとともに、導入メリットやデメリットについても分かりやすく紹介します。協働ロボットの導入を検討している方や、最新の自動化技術に興味のある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
協働ロボットとは
協働ロボットは、人と同じ空間で安全に作業できるロボットのことを指します。従来の産業用ロボットとは異なり、安全柵なしで作業者と直接協力できる設計になっており、衝突検知や力制御などの安全機能を備えています。
少子高齢化による人手不足や多品種少量生産の需要増加に対応するため、多くの企業が導入を進めています。
協働ロボットができることとは?
協働ロボットは安全に動作し単純作業や反復作業の効率化に貢献できるロボットです。具体的には、部品の組立、ネジ締め、検査、搬送、パレタイジング(荷積み)などの作業を担うことが可能です。
また、センサーやカメラを搭載することで、品質検査や異常検知などの精密な作業もこなせます。プログラムの変更によって異なる作業に対応できるため、多品種少量生産やカスタマイズ生産にも適応できる柔軟性を持っています。
産業用ロボットとは何が異なる?
産業用ロボットと異なる点は、安全柵の有無と人との協働性です。産業用ロボットは高速・高精度な動作が可能ですが、安全確保のため人とは分離して運用されます。
一方、協働ロボットは安全機能を搭載しており、人と同じ作業スペースで稼働可能です。また、産業用ロボットは大量生産向けであるのに対し、協働ロボットは多品種少量生産や組立作業に適しており、柔軟な生産体制の構築に貢献します。
協働ロボットのメリット
協働ロボットの導入により、生産現場の効率化や作業者の負担軽減が期待できます。人と協力しながら作業を行うことで、柔軟な生産体制を構築できる点が大きな魅力ですが、安全性や品質の向上にも貢献し、企業の競争力強化にもつながります。
そこでここからは、協働ロボットを導入することで得られる具体的なメリットについて詳しく解説します。
生産性の改善
協働ロボットは、単純作業や繰り返し作業を自動化し、人の作業負担を軽減することで生産性の向上に貢献します。例えば、部品の組み立てや検査をロボットに任せることで、人間はより高度な業務に集中できるようになります。
また、休憩なしで稼働可能なため、作業効率が安定し生産ライン全体の稼働率向上につながります。特に多品種少量生産の現場では、柔軟な対応が可能な協働ロボットの導入が効果的です。
労働環境の改善
長時間の労働は作業者の身体に大きな負担を与えますが、協働ロボットはこうした作業を代替することで作業者の疲労や身体的負担を軽減し、労働環境の改善に貢献します。また、長時間の立ち作業や細かい組立作業の補助を行うことで、作業の効率化も期待できます。
このように単純作業をロボットが担うことで、作業者はよりコアな業務や品質管理などの付加価値の高い業務に集中できるようになります。
品質の安定化
人間の作業にはどうしてもバラつきやミスが発生しますが、協働ロボットは常に同じ精度で作業を行うため、品質の安定化につながります。特に微細な部品の組立や検査作業では、ロボットの精密な動作が品質向上に貢献します。
これにより、不良品の発生を抑え、製品の品質維持や顧客満足度の向上にも寄与するメリットがあります。
柔軟な生産対応
協働ロボットは、多品種少量生産や頻繁な工程変更にも適しており、柔軟な生産対応が可能です。従来の産業用ロボットのように大規模な設備変更を必要とせず、プログラムの変更やツールの交換でさまざまな作業に適応できます。
この柔軟性に加えて人のようにパフォーマンスにバラツキが生じないため、生産力が安定するメリットもあります。
事故リスクを軽減
協働ロボットは、安全機能を搭載して人との直接作業を可能にしています。さまざまな安全機能を備えており、人と接触した際には即座に動作を停止する設計になっています。そのため、安全柵なしでも作業が可能で作業スペースを有効活用できる点もメリットです。
また、危険な作業や過酷な環境下での作業をロボットに任せることで、作業者の事故リスクを軽減し、安全な職場環境の構築が可能という側面もあります。
協働ロボット導入のデメリット
協働ロボットは多くのメリットを持つ一方で、導入には課題も存在します。例えば、初期投資コストや技術者の確保といった問題が挙げられます。また、完全な無人化には不向きなため、業務内容によっては産業用ロボットの方が適している場合もあります。
そこでここからは、協働ロボット導入における主なデメリットについて解説します。
初期投資コスト
協働ロボットは産業用ロボットと比べると導入コストが抑えられるものの、それでも初期投資が必要となります。ロボット本体の価格に加え、作業環境の整備やプログラム設定などの費用が発生するため、中小企業にとっては負担となる場合があります。
また、導入後のメンテナンスやアップデートにもコストがかかるため、長期的な運用コストも考慮する必要があります。費用対効果を十分に検討し、導入前にシミュレーションを行うことが重要です。
技術者不足
協働ロボットは直感的な操作が可能なモデルが多いものの、適切に運用するためには基本的なプログラミングやロボット制御の知識が必要です。そのため、導入後の設定や調整を行える技術者が不足している企業では、運用面での課題が生じる可能性があります。
また、トラブル発生時の対応やメンテナンスのために、外部の専門家との連携が求められるケースもあります。このように社内での技術者育成も重要なポイントなので、人材を抱えていない企業にとっては課題となる場合があるでしょう。
無人化には不向き
協働ロボットは「人と協力して作業を行うこと」を前提に設計されているため、完全な無人化には適していません。産業用ロボットのように高速・高精度な作業を単独で行うわけではなく、あくまで人を補助する役割を担います。
そのため、24時間無人で稼働させるような生産ラインには向いておらず、用途によっては従来の産業用ロボットやAGV(無人搬送車)との併用が必要になります。導入前に、作業環境に適したロボットかどうかを慎重に検討することが大切です。
まとめ
協働ロボットは、人と同じ空間で安全に作業できる点が大きな特徴であり、生産性向上や作業者の負担軽減、品質安定化といった多くのメリットをもたらします。一方で、初期投資コストや技術者の確保、無人化には不向きといったデメリットもあり、導入前の十分な検討が必要です。
導入の際は、自社の生産環境や目的に合わせて適切なロボットを選び、長期的な視点での費用対効果を考慮することが重要です。協働ロボットを適切に活用することで、より柔軟で効率的な生産体制を構築しましょう。
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