インナーウェアやルームウェアを主力商品とする株式会社白鳩は、ECを軸に成長を続けてきました。同社では事業拡大に伴い、物流現場における出荷量増加への対応、人手不足、在庫管理の精度向上といった課題が浮かび上がっていました。
その課題解決に向けて、白鳩は365日出荷が可能な安定した物流体制を整え、中長期的な成長を支える持続可能な仕組みづくりに着手します。こうした状況を受け、APTはオープンソースを活用した新たなWMS・WCSの導入を支援。既存システムとの親和性や将来的な内製運用を見据え、柔軟に構築可能な仕組みを開発しました。
その結果、出荷能力や在庫精度を大きく高める成果を上げています。今回は、白鳩のシステム部門を率いる高濱睦昇氏に、システム導入の背景やプロジェクト推進の過程、具体的な成果と今後の展望について詳しく話を伺いました。
INTEVIEW インタビュー
私たちのソリューションごとに、
導入による実績、効果等をお客様に伺いました。
この記事でわかる3つのポイント
出荷量1.6倍・棚卸時間短縮の裏側
自動倉庫システム「AutoStore」とAPTの連携がもたらした物流効率化の具体策
在庫精度の大幅な改善ポイント
WMSの内製化で実現した、正確で安定した在庫運用の仕組み
現場視点の改善と伴走支援の実際
APTの伴走型支援によって進化し続ける取り組みの全体像

株式会社白鳩 デジタルソリューション部 高濱 睦昇氏、
株式会社 APT 第一営業部 第一グループ グループマネージャー 寺尾 卓氏
株式会社 APT 第一営業部 第一グループ グループマネージャー 寺尾 卓氏
配送コストの上昇や人手不足…物流課題にどう向き合う?
白鳩は、インナーウェアやルームウェアを中心とした衣料品を取り扱い、ECを軸に成長を続けてきました。楽天市場などの外部モールへの出店など、販路を広げながら着実に売上を伸ばしています。
こうした複数の販売チャネルからの注文を効率よく処理する物流は、同社の成長を支える重要なインフラです。
スムーズな商品供給と高い出荷精度の維持は、顧客満足度の向上にも直結しています。
こうした複数の販売チャネルからの注文を効率よく処理する物流は、同社の成長を支える重要なインフラです。
スムーズな商品供給と高い出荷精度の維持は、顧客満足度の向上にも直結しています。

白鳩公式オンラインストア
しかし、近年は物流を取り巻く環境が大きく変化しています。
EC市場の拡大に伴い、配送リードタイムに対する顧客の期待値は一段と高まり、休日出荷のニーズ対応のための出荷日の拡大や安定的な出荷品質の維持には、これまで以上に効率的で精度の高いオペレーションが求められるようになりました。さらに、配送コストの上昇や人手不足など、物流現場に掛かる負荷は年々増加しています。
こうした中、白鳩では365日出荷体制への移行に踏み切ります。同社のシステム部門を牽引する高濱睦昇氏は、次のように語ります。
EC市場の拡大に伴い、配送リードタイムに対する顧客の期待値は一段と高まり、休日出荷のニーズ対応のための出荷日の拡大や安定的な出荷品質の維持には、これまで以上に効率的で精度の高いオペレーションが求められるようになりました。さらに、配送コストの上昇や人手不足など、物流現場に掛かる負荷は年々増加しています。
こうした中、白鳩では365日出荷体制への移行に踏み切ります。同社のシステム部門を牽引する高濱睦昇氏は、次のように語ります。
「当時は、現場の負荷を軽減し、誰でも安定して作業できる仕組みを整えることが大きな課題でした。具体的には、属人的だったピッキングや棚付け(入庫)作業を標準化し、直感的な画面指示に従って進められる運用体制づくりが求められていたのです。経験や担当者に依存せず、一定の精度で作業できる現場づくりを目指していました」(高濱氏)

株式会社白鳩 デジタルソリューション部 高濱 睦昇氏
また、在庫管理の精度向上も大きな課題でした。白鳩が取り扱う商品は、カラーやサイズのバリエーションが多く、SKU数が膨大です。そのため在庫差異が発生しやすく、結果として欠品や誤出荷が起こるケースがありました。こうした課題を解消するため、コードを活用した在庫一元管理の強化や、ロボットによるピッキングによって在庫精度を高める仕組みづくりも進めていきました。
ちょうどその頃、新社屋の建設計画が本格的に動き出します。現場からの改善ニーズに加えて、経営サイドでも物流DXへの意識が高まりつつあったのです。これを機に「倉庫を建て直すのであれば、中身の仕組みも見直そう」という声が上がります。
こうして、物流のあり方全体を再構築するという本格的な物流DXプロジェクトが始動していきます。
ちょうどその頃、新社屋の建設計画が本格的に動き出します。現場からの改善ニーズに加えて、経営サイドでも物流DXへの意識が高まりつつあったのです。これを機に「倉庫を建て直すのであれば、中身の仕組みも見直そう」という声が上がります。
こうして、物流のあり方全体を再構築するという本格的な物流DXプロジェクトが始動していきます。
AutoStore採用の舞台裏、APTを選んだ理由とは?
物流刷新プロジェクトの検討が本格化する中、白鳩ではシステムの検討も並行して進められていました。
当初の計画段階から、垂直搬送機やコンベヤーといったマテハン機器の導入に加え、WMS(倉庫管理システム)の新規導入も視野に入っていました。特に倉庫自動化の中核には、比較的早い段階で「AutoStore(ロボット型自動倉庫)」の採用が決定していましたが、その運用にあたっては、各種マテハン機器やWMSとの高度な連携が求められ、実装面での課題も浮上していました。こうした課題、柔軟なシステム統合に対応できるパートナーとして、APTがプロジェクトに加わることとなりました。
当初の計画段階から、垂直搬送機やコンベヤーといったマテハン機器の導入に加え、WMS(倉庫管理システム)の新規導入も視野に入っていました。特に倉庫自動化の中核には、比較的早い段階で「AutoStore(ロボット型自動倉庫)」の採用が決定していましたが、その運用にあたっては、各種マテハン機器やWMSとの高度な連携が求められ、実装面での課題も浮上していました。こうした課題、柔軟なシステム統合に対応できるパートナーとして、APTがプロジェクトに加わることとなりました。
複数の選択肢がある中で、APTが高く評価されたポイントは「提案姿勢」と「柔軟性」でした。
「複数社からの提案を比較する中で、APTさんは私たちの業務課題をしっかりと理解し、現場視点に立った提案をしてくれました。他社はどちらかというと、メーカー主体のパッケージ提案が多く、導入後の運用変更や微修正も全てベンダー側に依存する仕組みでした。一方でAPTさんは、将来的に自社内でも柔軟に対応できる余地を残してくれ、長い目で見た時の自由度が大きく違いました」(高濱氏)
実際、APTは白鳩の物流現場に合わせて柔軟な開発を進めていきました。現場の作業フローを細かくヒアリングした上で、最適な運用を実現するための画面・ロジックを構築。また、APTはソースコードを白鳩に開示し、システム改修や運用調整を社内で柔軟に対応できるようにしたのです。
「複数社からの提案を比較する中で、APTさんは私たちの業務課題をしっかりと理解し、現場視点に立った提案をしてくれました。他社はどちらかというと、メーカー主体のパッケージ提案が多く、導入後の運用変更や微修正も全てベンダー側に依存する仕組みでした。一方でAPTさんは、将来的に自社内でも柔軟に対応できる余地を残してくれ、長い目で見た時の自由度が大きく違いました」(高濱氏)
実際、APTは白鳩の物流現場に合わせて柔軟な開発を進めていきました。現場の作業フローを細かくヒアリングした上で、最適な運用を実現するための画面・ロジックを構築。また、APTはソースコードを白鳩に開示し、システム改修や運用調整を社内で柔軟に対応できるようにしたのです。

株式会社 APT 第一営業部 第一グループ グループマネージャー 寺尾 卓氏
高濱氏は「トラブルが起きたときも、原因の切り分けを自社である程度できる安心感があります。必要に応じてAPTさんに相談しながら素早く対処できるのも大きなメリットでした」と語ります。
物流DXの成果ー出荷量・在庫精度・棚卸効率が大幅改善


白鳩の倉庫内
APTの開発による新たな物流システムが稼働を開始すると、白鳩の物流現場は大きく変わり始めました。これまで属人的だったオペレーションが標準化され、在庫管理や出荷業務の精度と効率が一気に向上します。大きく3つの面で改善しました。
①出荷能力が1.6倍
まず出荷能力の面では、移転前は1日あたり最大でも8000件程度の出荷が上限でしたが、新システム稼働後は最大1万3000件まで拡大し、約1.6倍の処理件数となりました。また、出荷能力の向上を支えたのは、運用面での改善もありました。
1.納品書の出力タイミングを出荷直前に変更し、ミスを削減
従来は出荷指示と同時に納品書を印刷し、その納品書に従ってピッキングを行っていました。しかし、この方法では出荷準備中に注文内容の変更が入ると、納品書の再発行が必要になり、手戻りやミスの原因になっていました。
新たな仕組みでは、納品書は出荷直前まで出力せず、ピッキング時は画面上の指示に沿って作業を進める形に切り替え、すべての商品が揃った段階で納品書を出力し、出荷箱に同梱する流れに変更しました。「納品書を後回しにすることで、注文変更にも柔軟に対応でき、作業の無駄も減らすことができました」と高濱氏は語ります。
新たな仕組みでは、納品書は出荷直前まで出力せず、ピッキング時は画面上の指示に沿って作業を進める形に切り替え、すべての商品が揃った段階で納品書を出力し、出荷箱に同梱する流れに変更しました。「納品書を後回しにすることで、注文変更にも柔軟に対応でき、作業の無駄も減らすことができました」と高濱氏は語ります。
2.トータルピッキングで動線を短縮、SKUが多い現場でも安定処理を実現
従来のように各注文ごとに商品を拾い集めるのではなく、複数の注文にまたがる同じ商品をまとめてピッキングし、その後に仕分け・梱包を行う仕組みです。これにより、SKU数の多い白鳩の物流現場でも、作業動線が短縮され、大量出荷時でも安定して処理できる体制が整いました。
②欠品率は1/6に、棚卸差異率は1/5に改善
バーコード活用を徹底したことで、入出庫の都度、在庫データが正確に更新される仕組みが整いました。
在庫差異が減少し、欠品率は移転前の0.3%から0.05%へ改善されました。以前は在庫差異が起きると原因特定にも時間がかかっていましたが、バーコード管理に切り替えたことで、リアルタイムに在庫状況を把握できるようになったのです。
在庫差異が減少し、欠品率は移転前の0.3%から0.05%へ改善されました。以前は在庫差異が起きると原因特定にも時間がかかっていましたが、バーコード管理に切り替えたことで、リアルタイムに在庫状況を把握できるようになったのです。
③棚卸は2日→半日程度で完了
新システム導入前は、棚卸に丸2日かかっていましたが、現在ではわずか半日程度で完了しています。その背景には、「事前棚卸機能」があります。動きのないロケーションについては事前に在庫カウントを済ませ、本番の棚卸時には確認対象を大幅に絞り込む仕組みを導入。これにより、作業負荷が大きく軽減され、棚卸業務全体の生産性が飛躍的に向上しました。さらに棚卸精度も向上し、棚卸差異率は0.04%から0.008%へと大幅に改善されています。
「初回の棚卸はまだ慣れていなかったこともあり、夜遅くまでAPTさんに相談しながら何とか乗り越えました。その経験をもとに改善策を検討し、以降はスムーズに回るようになりました。現在はその仕組みが定着し、棚卸が短時間で実施できています」(高濱氏)
「初回の棚卸はまだ慣れていなかったこともあり、夜遅くまでAPTさんに相談しながら何とか乗り越えました。その経験をもとに改善策を検討し、以降はスムーズに回るようになりました。現在はその仕組みが定着し、棚卸が短時間で実施できています」(高濱氏)
Before/Afterで見る 物流DXの成果
項目 | Before(導入前) | After(導入後) |
---|---|---|
1日あたり出荷件数 | 最大8,000件 | 最大13,000件(約1.6倍) |
欠品率 | 0.30% | 0.05% |
棚卸差異率 | 0.04% | 0.0% |
棚卸にかかる時間 | 2日 | 0.5日(半日) |
こうした成果が積み重なったことで、現場の人的負荷は大きく軽減されました。作業者はミスなく安定的に作業を進められるようになり、浮いた時間を使ってSKU配置の見直しや業務改善のアイデア出しなど、より付加価値の高い取り組みにもチャレンジできるようになっています。
さらに、365日出荷体制の実現により納期が短縮され、顧客満足度の向上にも貢献しています。顧客側からの誤出荷や納品遅延に関する問い合わせも減少し、サービス品質全体の底上げに繋がっています。
さらに、365日出荷体制の実現により納期が短縮され、顧客満足度の向上にも貢献しています。顧客側からの誤出荷や納品遅延に関する問い合わせも減少し、サービス品質全体の底上げに繋がっています。
DXは次のステージへ―精度と柔軟性の両立をめざす
新たな物流体制の稼働から一定の期間が経過し、白鳩では次のステップに向けた取り組みが進み始めています。
導入当初の大きな目的だった「属人性の排除」「出荷精度の向上」「出荷能力の拡張」といった目標はひと通り実現しつつある一方で、高濱氏は「まだ改善できる余地は十分に残っている」と冷静に現状を見つめています。
導入当初の大きな目的だった「属人性の排除」「出荷精度の向上」「出荷能力の拡張」といった目標はひと通り実現しつつある一方で、高濱氏は「まだ改善できる余地は十分に残っている」と冷静に現状を見つめています。
「特に、SKU数が多いという商材特性上、在庫管理精度が高まれば高まるほど、現場作業全体の安定性や省力化にもつながっていきます。そのため、在庫精度のさらなる向上や誤出荷・欠品率の低減は今後も追求していく重要なテーマです」(高濱氏)
現状でもかなりの精度には到達していると評価しつつも、もう一段階、高精度な物流を目指して改善を重ねていきたいと次のステージを見つめます。
今回の物流刷新を通じて、白鳩は安定的かつ柔軟な物流基盤を確立しました。APTは、現場に寄り添う柔軟な開発力と伴走型のサポートを通じて、今後も課題解決のプロセスを一歩ずつ共に歩んでいく考えです。
現状でもかなりの精度には到達していると評価しつつも、もう一段階、高精度な物流を目指して改善を重ねていきたいと次のステージを見つめます。
今回の物流刷新を通じて、白鳩は安定的かつ柔軟な物流基盤を確立しました。APTは、現場に寄り添う柔軟な開発力と伴走型のサポートを通じて、今後も課題解決のプロセスを一歩ずつ共に歩んでいく考えです。
