INTEVIEW インタビュー

私たちのソリューションごとに、
導入による実績、効果等をお客様に伺いました。

老朽化WMSからの脱却

手原産業倉庫 × APTが挑んだ刷新プロジェクトの舞台裏

この記事でわかる3つのポイント
外資系WMSからの全面リプレイスの全貌
老朽化とサポート縮小に直面した後、柔軟かつ堅牢なWMSを再構築したプロジェクトの経緯と成果。
物流DXが実現した現場改善の具体策
ピッキングレーン移設、モニター設置と制御最適化、音声ガイダンス導入など、効率化・精度向上をもたらした施策。
2030年問題を見据えた持続可能な物流への挑戦
深刻化する人手不足に備え、機械化・無人化を進める背景と、社会課題への危機感。
食品や文具、医薬品など、幅広い業種の企業の物流を支える総合物流企業の手原産業倉庫。関西を拠点に広域ネットワークを展開し、商品の保管・仕分け・出荷・配送までを一貫して担っています。

同社は、取引先である法人顧客の高度化するニーズに対応するため、現場オペレーションの自動化・最適化を進めてきましたが、その中核を担うWMS(倉庫管理システム)の老朽化が、業務効率化のボトルネックとなっていました。

そこで手原産業倉庫は、APTとともにWMSのリプレイスを実施。現場の実情に即した形で、柔軟かつ堅牢なシステム基盤と業務フローを再構築しました。今回は、プロジェクトの背景から導入プロセス、そして刷新によってもたらされた成果について、手原産業倉庫の物流センターを支えるキーパーソンたちに話を伺いました。
前列左から:株式会社APT 藤野 龍三氏、株式会社手原産業倉庫 鹿島 幸治氏、坂本 俊一氏 <br />
後列左から:株式会社APT 寺尾 卓氏、株式会社手原産業倉庫 中山 貴公氏、鈴木 学氏、木下 真之氏、宮﨑 健二氏
前列左から:株式会社APT 藤野 龍三氏、株式会社手原産業倉庫 鹿島 幸治氏、坂本 俊一氏
後列左から:株式会社APT 寺尾 卓氏、株式会社手原産業倉庫 中山 貴公氏、鈴木 学氏、木下 真之氏、宮﨑 健二氏

外資系WMS撤退でサポート縮小…どう対応する?

手原産業倉庫の物流センターでは、業種や出荷量の異なる多様な法人顧客に対し、高品質かつタイムリーな物流サービスを提供しています。とりわけ、文具や医薬品など、SKU数が膨大でかつロットが小さい商材を短納期で扱う必要があることから、倉庫内オペレーションにはきわめて高い柔軟性と精度が求められます。
株式会社手原産業倉庫。1972年創業。本社は滋賀県野洲市。
株式会社手原産業倉庫。1972年創業。本社は滋賀県野洲市。
こうした要請に応えるため、同社は2001年の物流センター竣工時から、倉庫やコンベアなどの自動化設備を導入。あわせて、外資系ベンダー製のWMS(Warehouse Management System)を採用し、本格的なセンター運営をスタートさせました。

しかし、その後まもなくWMSの提供元である外資系ベンダーの日本法人が日本から撤退。サポート体制が失われたことで、その保守やアップデートが徐々に困難となり、不具合が発生しても外部からの支援を受けられない状態に陥りました。

また、ピッキングラインやソーターといった新たな物流設備を導入しましたが、既存WMSとの連携ができず、在庫の引き当てのみを担う限定的な役割にとどまっていました。物流の中核を担うWMSの老朽化と連携不足が、現場のスピード感に対応しきれない大きな課題として顕在化していきました。

「老朽化したシステムに継ぎ足しで対応してきましたが、全体を見渡して最適化できる状況ではありませんでした。現場の業務とシステムの間に常にギャップがあり、それを人の工夫で埋め続けてきたというのが実情です。WMSに障害が起きれば『強制シャットダウン→再起動』という場当たり的な対応しか取れず、システムとしての限界が露呈しつつありました」(手原産業倉庫 常務取締役 坂本 俊一氏談)
株式会社手原産業倉庫 取締役  経営本部  本部長   鹿島 幸治氏
株式会社手原産業倉庫 取締役 経営本部 本部長 鹿島 幸治氏

APTとの出会い、トラブルの中で深まった信頼関係

WMSへの課題が顕在化しつつあるなかで、APTとの最初の出会いとなったのは、ピッキングラインや仕分けソーターに関する管理システムの更新でした。当時、物流設備の刷新案件を多く手がけていた企業からの紹介により、APTがプロジェクトに参画。まずは設備制御の領域で協力関係が始まりました。

その後、自動倉庫の制御系(WCS)についてもAPTが手がけるようになり、徐々に支援領域が広がっていきます。

そんな中、ついにWMSが完全停止する深刻なトラブルが発生します。復旧の目処も立たないまま、WMSなしでの出荷業務を余儀なくされる事態に。倉庫スタッフ総出での作業が続く中、APTに相談したところ、すぐに臨時の代替システムを構築してくれたのです。

手原産業倉庫の関係者は「現場が疲弊している中で、APTさんは深夜まで現場に付き合ってくれました。正直、あの対応がなければ乗り切れていなかったと思います」と当時を振り返ります。
株式会社APT ソリューション開発本部 システム部部長 藤野 龍三氏
株式会社APT ソリューション開発本部 システム部部長 藤野 龍三氏
その後、専門業者の協力も得て、物理的なハードディスクの復旧に成功し、ようやく業務を再開。しかし、これを機に社内では「WMSを変えるしかない」との声が高まり、APT社が開発するWMSへの全面リプレイスが正式に決断されました。

WMSリプレイスプロジェクトは、現場の運用実態に合わせた仕様設計やテストを重ねながら進行し、無事に新システムが稼働を開始。それまで日常的に発生していた障害や突発的な対応はなくなり、安定した運用が続いています。

WMSの刷新によって業務プロセスのスピードと精度は大きく向上し、現場からは「システムのことを気にせず、業務に集中できるようになった」との声も上がっています。老朽化したWMSに振り回されていた日々から一転、物流の中核が安定して機能する環境が整ったのです。

物流DXの具体的な取り組みと改善ポイント

1. ピッキングレーン移設で実現した効率化とミス削減
直近の大規模な取り組みが、自動倉庫のピッキングレーンを1階から2階へ移設するプロジェクトです。従来は、自動倉庫から1階にまとめて出庫し、リストを見ながら目視でピッキングする「リストピッキング型」でした。APTとの改良により、必要な商品だけをピンポイントで呼び出し、2階のコンベアラインに直接流す仕組みに刷新。作業効率の大幅な向上とミス削減を同時に実現しました。
2. 進捗モニター設置と制御最適化で出荷効率向上
ゾーンごとに進捗モニターを設置し、出荷の優先順位がリアルタイムで変化しても、それに合わせて設備制御を最適化することで、出荷効率を向上させました。
工程全体の流れをスムーズにし、視認性を高めることで、現場からは「作業ストレスが確実に軽減された」という声が上がっています。
3. 音声ガイダンスと商品情報活用による品質向上
倉庫内では、音声ガイダンスの導入や、商品ごとの写真登録・属性情報の付与を行い、視覚的・聴覚的に情報を得られる環境を構築。作業ミスの削減と品質向上につながり、「対応がしやすくなった」との評価が寄せられています。
右:APTのシステムと連携する自動化設備により、出荷精度と作業効率を両立する物流現場。 左:キャプション:モニターで作業を確認する作業員。
右:APTのシステムと連携する自動化設備により、出荷精度と作業効率を両立する物流現場。 左:キャプション:モニターで作業を確認する作業員。
右:APTのシステムと連携する自動化設備により、出荷精度と作業効率を両立する物流現場。 左:キャプション:モニターで作業を確認する作業員。
また、日常運用における細やかな要望についても、APTには現場から様々な相談が寄せられています。例えば、自動倉庫では原則「古い期限から順に出庫する」ロジックが組まれていますが、特定企業の業務では「新しいものから出してほしい」という荷主の要望が発生したケースもあります。

このように、一見細かく複雑に見える相談にも、APTは現場の背景を踏まえて最適な解決策を検討し、作業者が運用面で混乱しないように配慮を欠かさない姿勢をもっています。こうした対応力が、現場からの深い信頼につながっています。

「APTさんの最大の強みは、こちらの要望に対して柔軟かつ迅速に対応してくれること。仕様が決まっていなくても、相談すれば最適な方法を提示してくれるので、ついつい相談してしまいます」(手原産業倉庫 センター事業部 第2営業部 係長 中山 貴公氏談)
株式会社手原産業倉庫 常務取締役 坂本 俊一氏
株式会社手原産業倉庫 常務取締役 坂本 俊一氏
こうした取り組みを積み重ねることで、確実に現場の精度やスピードが改善しています。実際に「2人がかりだった業務が、1.5人で対応できるようになった」「1回あたりのピック可能点数は20〜30から100以上へと数倍に増加」といった変化も現れ始めています。

今後はこれらの効果を定量的に可視化し、APTとの協力体制の中でさらなる改善を進めていく考えです。

物流2030年問題を見据えて、「プリンがなくなる日」を防ぐ

手原産業倉庫が効率化を進める背景には、日本全体が直面する人口減少という避けられない社会課題があります。特に、賞味期限の短いチルド商品をはじめとする食品を取り扱う同社にとって、人手不足は深刻な問題です。

この危機感を社内外で共有するために、同社では「将来、プリンが食べられなくなる日が来るかもしれない」という比喩を用いています。チルド商品は、製造・搬送・仕分けを短時間で行う必要がありますが、そのいずれかの物流機能が止まれば、消費者の食卓からプリンが消えてしまう可能性さえあるのです。

同社は、人手不足が進むなかで物流現場の機械化・無人化を進めることは、生活インフラを守るための不可欠な一歩だと考えています。物流の2030年問題を見据え、こうした課題意識を業界全体、そして社会全体で共有し、解決に向けた文化を育てていくことが重要だとしています。