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フィジカルインターネットとは:2040年に向けた物流の将来像と、荷主・CLOが今からできること

執筆:株式会社APT公開日:更新日:

経営層向けの要点

  • フィジカルインターネットとは、インターネットの通信の考え方を物流に当てはめ、規格をそろえた荷物を、複数の企業が倉庫やトラックを共有するネットワークで運ぶ仕組みです。
  • 国は2040年度の実現を目標にロードマップを定め、2026年7月の改訂で、2026〜2030年度を「離陸期」と位置づけています。業界ごとのアクションプランづくりも進んでいます。
  • 実現の前提は、パレットなどの物流資材と、商品や物流のデータの標準化です。自社の拠点で標準に合わせておくことが、将来の共同物流への参加の準備になります。

フィジカルインターネットとは、インターネットの通信の考え方を物流(フィジカル)に当てはめた、新しい物流の仕組みです。デジタル技術で物資や倉庫、車両の空き状況を見える化し、規格をそろえた容器に詰めた貨物を、複数の企業が倉庫やトラックなどを共有するネットワークで運びます。

インターネットにたとえると

インターネットでは、データを小さな塊(パケット)に分け、やりとりの決まり(プロトコル)をそろえることで、1本の回線を不特定多数の人が共有して通信できます。フィジカルインターネットは、この考え方を物流に持ち込もうとするものです。

インターネット フィジカルインターネット
データの塊(パケット) 規格をそろえた容器に詰めた貨物
やりとりの決まり(プロトコル) 物流資材や、商品・物流のデータの標準
不特定多数で共有する回線 複数の企業で共有する倉庫・トラックなどのネットワーク

この考え方は2010年頃に提案され、国際的に研究が進められています。欧州では、ALICE(欧州物流革新協力連盟)が、2020年に2040年までの「フィジカルインターネット・ロードマップ」を発表しています。

なぜ必要とされているのか

国のロードマップでは、電子商取引の増加、積載効率の低下、人口減少による労働力不足の深刻化などで、物流の需要と供給のバランスが崩れつつあるとしています。この構造的な問題を放置し、有効な対策を講じなかった場合、2030年時点で7.5〜10.2兆円の経済損失が生じる可能性があるとの試算が示されています。

国のロードマップ

経済産業省と国土交通省は、2021年10月に「フィジカルインターネット実現会議」を設け、2022年3月に「フィジカルインターネット・ロードマップ」を取りまとめました。2040年度を目標とした物流のあるべき将来像として、我が国でフィジカルインターネットを実現するための道筋を示したものです。政府レベルのロードマップとしては世界初とされています(経済産業省の資料)。ロードマップはその後、2025年6月と2026年7月に改訂されています。

2040年度までの4つの時期

2026年7月の改訂版では、2040年度までを次の4つの時期に分けています。

時期 年度
準備期 2025年度まで
離陸期 2026〜2030年度
加速期 2031〜2035年度
完成期 2036〜2040年度

改正物流効率化法が全面施行された2026年度は、離陸期の始まりに当たります。

取組の6つの項目

ロードマップは、業界をまたいで行うべき取組を、次の6つの項目に整理しています。

  1. 輸送機器(自動化・機械化)
  2. 物流拠点(自動化・機械化)
  3. 垂直統合(BtoBtoCのサプライチェーンマネジメント)
  4. 水平連携(標準化・シェアリング)
  5. 物流・商流データプラットフォーム
  6. ガバナンス

各項目について、パレットやコンテナ容器などの物流資材の標準化・シェアリング、データ連携のためのマスタやプロトコルの整備、企業の経営者のサプライチェーンマネジメントやロジスティクスを重視する意識への変革など、2040年度までに段階的に行う取組が示されています。

実現する4つの価値

価値 内容の例
効率性(世界で最も効率的な物流) 資源の最大限の活用による物流の効率化、カーボンニュートラル、廃棄ロス・ゼロ
強靭性(止まらない物流) 生産拠点・輸送手段・経路・保管の選択肢の多様化、企業間・地域間の連携
良質な雇用の確保(成長産業としての物流) 物流に従事する人の適正な労働環境、新しい産業と雇用の創出
ユニバーサル・サービス(社会インフラとしての物流) 開かれた中立的なデータプラットフォーム、買い物弱者や地域間の格差の解消

CLOに期待されていること

2026年7月の改訂版では、改正物流効率化法の全面施行にも触れ、物流統括管理者(CLO)には、経営の視点で、物流も含めたサプライチェーン全体の最適化を進めることが期待されているとしています。

業界ごとの動き

ロードマップに基づき、業界別のワーキンググループが設けられ、業界ごとの課題の整理や標準化、商慣行の見直しに関するアクションプランづくりが進められています。2026年7月の改訂版では、スーパーマーケット等、百貨店、建材・住宅設備(2021年度)、化学品(2023年度)、医薬品(2024年度)、家電(2025年度)、自動車(2026年度)のワーキンググループが示されています。

アクションプランは、おおむね2030年までの物流効率化に向けたものとされています。なお、経済産業省の資料(2025年6月)では、医薬品は2035年までのアクションプランを作るとされています。

荷主の拠点で、今からできること

フィジカルインターネットは2040年度を目標とする将来像ですが、その前提となる標準化は今から進められます。物流効率化法の荷主の判断基準にも、次のような取組が例として挙げられています。

  • 標準仕様のパレットなどを使い、パレットの規格をそろえる(主に発荷主に当たる第一種荷主の取組)
  • 物流情報標準ガイドラインに沿うなどして、物流のデータを標準化する
  • 荷待ち時間・荷役等時間や積載効率を、デジタル技術も使って把握する

拠点の設備やシステムを更新するときに、パレットの規格や、ほかの企業とデータをやりとりできるかどうかを確認しておくと、将来の共同輸配送や拠点の共同利用に参加しやすくなります。荷待ち時間・荷役等時間の記録をどのような項目で残すかは、荷待ち時間・荷役等時間の計測方法の記事で整理しています。

よくある質問

フィジカルインターネットと共同輸配送は、何が違うのですか。
フィジカルインターネットは、共同輸配送を、規格とやりとりの決まりをそろえることで不特定多数の企業が参加できるネットワークへ広げようとする構想です。国の資料でも、複数の企業の倉庫やトラックを共有したネットワークで運ぶ「共同輸配送システム」と説明されています。特定の企業同士で組む共同輸配送との違いは、インターネットのように規格をそろえ、多くの企業が共有できるようにすることを目指している点です。
フィジカルインターネットの国のロードマップは、いつまでに何を目指していますか。
2040年度を目標に、我が国でフィジカルインターネットを実現することを目指しています。ロードマップは2022年3月に策定され、2025年6月と2026年7月に改訂されました。2026年7月の改訂版では、2025年度までを「準備期」、2026〜2030年度を「離陸期」、2031〜2035年度を「加速期」、2036〜2040年度を「完成期」としています。
フィジカルインターネットに向けて、荷主が今すぐ取り組めることはありますか。
はい、パレットの規格と物流データの標準化から始められます。物流効率化法の荷主の判断基準にも、標準仕様のパレットの利用(主に発荷主に当たる第一種荷主の取組)や、物流情報標準ガイドラインに沿ったデータの標準化が取組の例として挙げられています。こうした標準化は、フィジカルインターネットの前提でもあります。

出典

制度の内容の最終確認日:

制度の内容は変わることがあります。最新の情報は出典のページでご確認ください。

自社の拠点に当てはめて考えたいときは

現状を伺い、優先して確認すべき拠点・データ・改善テーマを整理します。資料の準備は不要です。