モーダルシフトとは?メリット・デメリットと、荷主・CLOが検討する進め方【物流効率化法】
経営層向けの要点
- モーダルシフトとは、トラックなどで行っている貨物輸送を、環境への負荷が小さい鉄道や船に切り替えることです。トラックドライバーの不足への対策としても注目されています。
- 国は2026年3月の総合物流施策大綱で、2030年度に鉄道221億トンキロ、船舶410.4億トンキロの輸送を目標にしています。物流効率化法では、モーダルシフトは判断基準そのものではありませんが、荷主が「可能な限り取り組むことが望ましい」事項とされ、中長期計画の取組として書くことができます。
- トラックより時間がかかり、災害や荒天で止まるおそれもあります。検討は、長距離の輸送区間の洗い出しと、発注・納品のリードタイムの社内調整から始めます。
モーダルシフトとは、トラックなどで行っている貨物輸送を、鉄道や船に切り替えることです。国土交通省は、トラック等の自動車で行われている貨物輸送を「環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換すること」と説明しています。
もとは CO2 を減らす取組として進められてきましたが、今はトラックドライバーの不足への対策としても注目されています。この記事では、国の定義と目標を確認したうえで、荷主と物流統括管理者(CLO)がモーダルシフトを検討するときの進め方を整理します。
モーダルシフトが今、注目されている理由
トラックの輸送力が足りなくなる
国の検討会は2023年に、何も対策をしなければ2030年度に輸送力が約34%不足する可能性があるという試算を示しました。トラックだけに頼らない輸送を増やすことは、この不足への対策の1つです。背景は物流の2030年問題とはで解説しています。
CO2を大きく減らせる
国土交通省の2024年度の試算では、1トンの貨物を1km運ぶときの CO2 の排出量は次のとおりです。
| 輸送手段 | CO2の排出量(1トンキロあたり) | 営業用トラックとの比較 |
|---|---|---|
| 営業用トラック | 195g | ― |
| 航空 | 103g | 約2分の1 |
| 船舶 | 41g | 約5分の1 |
| 鉄道 | 19g | 約10分の1 |
これは輸送手段ごとの平均的な値で、自社の輸送で同じだけ減ることを保証するものではありません。実際に比べるときは、駅や港までのトラックでの集配も含めて、区間ごとの距離と量で計算します。
そのほかのメリット
- トラックドライバーの不足に備えられる:長距離の区間を鉄道や船に任せると、トラックで運ぶのは駅・港までの短い区間になります
- 中長期計画の取組になる:特定荷主は、物流効率化法の中長期計画に、積載効率の向上の取組として書けます(後述)
- 国の支援を使える場合がある:ほかの企業と連携して計画を作り、国の認定を受けると、補助事業などの対象になり得ます(後述)
国の目標:2030年度に鉄道221億トンキロ、船舶410.4億トンキロ
2026年3月31日に閣議決定された総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)は、陸・海・空のあらゆる輸送手段を総動員する「新モーダルシフト」を進めるとし、次の目標を示しています。トンキロは、運んだ重さ(トン)に距離(km)を掛けた量です。
| 輸送手段 | 現状 | 2030年度の目標 |
|---|---|---|
| 鉄道 | 164億トンキロ(2024年度) | 221億トンキロ |
| 船舶 | 371億トンキロ(2023年度) | 410.4億トンキロ |
これとは別に、政府は2023年10月の物流革新緊急パッケージで、鉄道のコンテナ貨物と、フェリー・RORO船などの内航海運の輸送量・輸送分担率を「今後10年程度で倍増」させる方針を示しています。
ただし、これまでは目標どおりに進んでいません。大綱によると、前の大綱で目標にした2025年度の鉄道209億トンキロ・海運389億トンキロに対し、鉄道は2019年度の184億トンキロから2024年度には164億トンキロに減り、海運も2023年度には371億トンキロにとどまりました。大綱は、鉄道は度重なる自然災害による大規模な輸送障害で荷主からの信頼が低下したこと、海運は荒天や機関故障などによる欠航の影響を、理由に挙げています。
物流効率化法との関係
判断基準では「取り組むことが望ましい事項」
2025年4月から、すべての荷主に、積載効率の向上や荷待ち時間の短縮などに努める義務(努力義務)がかかっています。具体的な取組は「荷主の判断基準」に定められています。
モーダルシフトは、この判断基準そのものには入っていません。判断基準の解説書では、判断基準に定める取組のほかに、荷主が可能な限り取り組むことが望ましい事項として、次のように書かれています。
- 貨物の運送を委託するときは、モーダルシフトなどにより、トラックへの過度の集中を是正するよう努める
- 具体的には、ダブル連結トラックや自動運転トラックの導入、鉄道・船舶・航空貨物輸送のさらなる活用などに取り組む
中長期計画に書ける取組
国が2026年10月に公表した「中長期計画作成に当たってのポイント」は、積載効率の向上の点検項目として「長距離輸送を不必要にトラックのみに依存していないか」を挙げ、対応の方法としてモーダルシフトを示しています。計画に書く取組の例は、鉄道・船舶・航空貨物輸送へ切り替えられる可能性がないかを検証すること、とされています。
特定荷主(取扱貨物の重量が年9万トン以上で国の指定を受けた荷主)は、すぐに切り替えられなくても、検証することを中長期計画の取組として書けます。書き方は中長期計画書の書き方で整理しています。
モーダルシフトに向いている輸送、向いていない輸送
距離の目安
国土交通省は、これまでモーダルシフトはおおむね500km以上の長距離輸送でないと難しいと考えられていたが、最近では300〜400kmといった比較的短い距離での例も増えているとしています。
輸送の方法と荷姿
鉄道か船か、どの船を使うかで、運び方が違います。
| 輸送手段 | 主な運び方 |
|---|---|
| 鉄道 | 荷物をコンテナに積み、駅でトラックから貨車に載せ替えて運ぶ |
| フェリー | 荷物を積んだトラックやトレーラーごと船に載せる。ドライバーが一緒に乗る方法と、荷台(トレーラー)だけを運ぶ方法がある |
| RORO船 | 主に、ドライバーが乗らずにトレーラーなどの荷台だけを運ぶ |
| コンテナ船 | コンテナを運ぶ |
国土交通省の「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」(2025年5月)は、フェリーはドライバーも乗船できることから、今の物流を大きく変えずに使えるとしています。船の場合は、駅や港で必ず荷物をコンテナに積み替えるわけではありません。
鉄道では、コンテナに荷物を積んで運びます。JR貨物によると、31フィートコンテナは内容積が10トントラックとほぼ同じで、1,100mm×1,100mmのパレットを大型トラックと同じく16枚積めます。国の大綱も、10トントラックから積み替えやすい31フィートコンテナの取扱いを拡大するため、貨物駅の施設整備を進めるとしています。
パレットに載せて運んでいる荷物は、コンテナへの積み込みや取り出しがしやすくなります。
デメリットと注意点
| 注意点 | 内容 |
|---|---|
| リードタイムが長くなることがある | 大綱も、鉄道・海運はトラック輸送よりリードタイムが長いとしています。経路や運行のダイヤによって変わるため、駅・港までの集配を含めた全体の日数で、今の納期を守れるかを確認します |
| 止まるおそれ | 災害や荒天、故障で、運休や欠航が起きることがあります。代わりの輸送手段を決めておく必要があります |
| 駅・港までの集配 | 出発地から駅・港まで、駅・港から届け先までは、トラックで運びます |
| 荷物の量 | コンテナや船の単位に合う量がまとまるかを確認します。量が足りない場合は、ほかの荷主と一緒に運ぶ方法もあります |
ほかの荷主と荷物をまとめて運ぶ方法は、共同配送とはで解説しています。
荷主がモーダルシフトを検討する手順
国の資料をもとに、APTが整理した進め方の例です。法令で決められた手順ではありません。
- 長距離の輸送区間を洗い出す:出荷先・仕入先ごとに、距離、月あたりの量、荷姿(パレットかどうか)、今のリードタイムを一覧にします
- リードタイムと受け渡しの条件を社内で調整する:鉄道や船にすると、納品までの日数が延びることがあります。大綱も、納品までのリードタイムを延ばすことで鉄道・海運への切り替えを促すことが重要だとしています。営業・調達の部門や取引先と、どこまで延ばせるかを話し合います。あわせて、荷姿、積み降ろしの方法、出荷の締め時刻、届け先での受け取りの条件も確認します
- 物流事業者と相談し、試験的に運ぶ:鉄道・船の区間、駅・港までの集配、費用、運べる量を確認し、一部の荷物で試します
- 止まったときの代わりを決める:災害や欠航のときに、トラックに戻すのか、別の経路を使うのかを、事前に決めておきます
- 計画に書き、結果を測る:特定荷主は中長期計画に書きます。切り替えた量、CO2の削減量、リードタイムの変化を記録し、毎年見直します
リードタイムの調整は、物流部門だけでは決められないことが多い取組です。営業・生産・調達などの部門をまたいで調整するのは、CLOの役割の1つです(物流統括管理者(CLO)とは)。
使える国の制度
総合効率化計画の認定
物流効率化法には、2者以上が連携して輸送の合理化などを行う「総合効率化計画」を国が認定する仕組みがあります。特定荷主が国に出す「中長期計画」とは別の制度で、使うかどうかは任意です。モーダルシフトは、輸送網の集約や輸配送の共同化と並ぶ対象の1つです。国の認定申請の手引きでは、基本的には法人格が異なる者どうしの連携であることが求められています。
認定の申請と一緒にトラック運送事業などの許可の審査に必要な書類を出すと、認定と同時に許可などを受けられる特例があります。このほか、認定を受けた計画にもとづく倉庫などへの税制の特例や、融資などの支援があります。税制の特例の内容と期限は税制の改正で変わるため、申請の前に国土交通省のページで確認してください。
補助事業は年度ごとに公募される
総合効率化計画と組み合わせた国の補助事業が、年度ごとに公募されています。2026年度は「物流効率化推進事業」として、荷主や物流事業者などでつくる協議会が総合効率化計画を作るための調査の費用と、認定を受けた計画にもとづくモーダルシフトなどの運行の費用の一部が対象でした。補助を受けるには、認定とは別に申請と審査が必要です。2026年度の応募の受付(4月7日〜6月5日)は終了しています。名前や対象は年度によって変わります。
エコレールマーク・エコシップマーク
鉄道や船を一定以上使っている企業や商品を認定する制度として、エコレールマーク(鉄道)とエコシップマーク(海運)があります。取引先や消費者に、取組を伝える手段になります。
拠点の側で準備できること
鉄道や船は、出発の時刻が決まっています。拠点で出荷の締め時刻までに荷物をそろえ、トラックへの積み込みを早く終えられるかが、切り替えた後の安定した運用を左右します。輸送の方法に合わせて荷姿を見直し、パレット化が有効な場合は、積める量や荷役の方法、パレットの回収方法もあわせて検討します。積み込みや検品の時間を減らす方法は、物流改善の進め方で整理しています。
倉庫内の設備・システムの見直しをAPTに相談する
輸送の方法を変えると、出荷の締め時刻や荷姿が変わり、拠点の中の作業が追いつかなくなることがあります。
APTは、メーカーを問わない物流エンジニアリング会社として、倉庫の課題の整理から、既設の自動倉庫やコンベアのリニューアル、倉庫管理システム(WMS)・設備の制御システム(WCS)の更新まで支援しています。鉄道や船の手配は行っていませんが、新しい締め時刻までに荷物をそろえ、積み込みを間に合わせられるかといった、拠点の中の作業・設備・システムの見直しからご相談いただけます。進め方の実例は導入事例をご覧ください。
よくある質問
- モーダルシフトとは何ですか。
- 国土交通省は、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を、環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換することと説明しています。CO2の削減に加えて、トラックドライバーの不足への対策としても注目されています。
- モーダルシフトは、物流効率化法で義務になっていますか。
- いいえ、義務ではありません。荷主の判断基準の解説書では、判断基準に定める取組のほかに、荷主が可能な限り取り組むことが望ましい事項として、モーダルシフトなどによりトラックへの過度の集中を是正することが挙げられています。特定荷主の中長期計画では、積載効率の向上の取組として書くことができます。
- 何km以上の輸送なら、モーダルシフトを検討する価値がありますか。
- 国土交通省は、これまではおおむね500km以上の長距離輸送でないと難しいと考えられていたが、最近では300〜400kmといった比較的短い距離での例も増えているとしています。距離だけでなく、荷物の量や、駅・港までの距離、必要なリードタイムもあわせて検討します。
- モーダルシフトで、CO2はどのくらい減りますか。
- 国土交通省の2024年度の試算では、1トンの貨物を1km運ぶときのCO2の排出量は、営業用トラックの195gに対して、船舶は41g(約5分の1)、鉄道は19g(約10分の1)です。
- モーダルシフトのデメリットは何ですか。
- トラックより納品までの時間(リードタイム)が長くなることと、災害や荒天、故障などで鉄道や船が止まるおそれがあることです。国の総合物流施策大綱も、鉄道は度重なる自然災害による輸送障害で荷主の信頼が低下したこと、海運は荒天や機関故障による欠航の影響を受けたことを挙げています。
- モーダルシフトに使える補助金はありますか。
- 物流効率化法の「総合効率化計画」の認定と組み合わせた国の補助事業が、年度ごとに公募されています。2026年度は「物流効率化推進事業」として公募され、応募の受付はすでに終わっています。名前や内容は年度によって変わるため、国土交通省のページで最新の公募を確認してください。
- 総合効率化計画の認定は、1社だけで受けられますか。
- 原則として受けられません。国の認定申請の手引きでは、基本的には法人格が異なる者どうしの連携であることが求められています。荷主と物流事業者、または複数の荷主が連携して計画を作ります。
出典
- 国土交通省「モーダルシフトとは」(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 「総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)」(2026年3月31日 閣議決定)本文(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省 報道発表「総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)が閣議決定されました」(2026年3月31日)(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省・経済産業省・農林水産省「荷主の貨物自動車運送役務の持続可能な提供の確保に資する運転者の運送及び荷役等の効率化に関する判断の基準の解説書」第1.4版(2026年3月30日)(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省・経済産業省・農林水産省「中長期計画作成に当たってのポイント」(2026年10月5日)(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 「2030年度に向けた政府の中長期計画」(2024年2月16日 我が国の物流の革新に関する関係閣僚会議決定)(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省「物流革新緊急パッケージ」抜粋資料(2023年10月6日 関係閣僚会議決定)(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省「『総合効率化計画』認定申請の手引き」(令和7年4月改訂版)(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省「物流効率化法の概要(総合効率化計画の認定)」(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省「物流効率化推進事業(モーダルシフト等)」(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 国土交通省「内航海運へのモーダルシフト利用検討ガイド」(令和7年5月)(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
- 日本貨物鉄道株式会社「31ftコンテナ」(新しいタブで開きます)(2026年10月27日閲覧)
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