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物流DXとは?荷主の事例と、データの見える化から始める進め方【CLO・物流効率化法】

執筆:株式会社APT公開日:

経営層向けの要点

  • 物流DXとは、機械化やデジタル化で今の作業を改善し、働き方を変えるとともに、物流のこれまでのあり方を変える取組の総称です。国の総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)がこの言葉を定義し、2026年3月の新しい大綱も、物流標準化とあわせて推進するとしています。
  • 物流効率化法の荷主の判断基準にも、荷待ち時間のデジタルでの計測、トラック予約受付システム、物流データの標準化などが出てきます。ただし、国は「システムの導入は手段」であり、導入そのものは求めていないとしています。
  • 荷主の物流DXは、システム選びからではなく、自社のモノの流れを把握し、荷待ち時間などのデータを同じ物差しで見える化することから始めます。データの項目は国の「物流情報標準ガイドライン」に合わせておくと、取引先と連携しやすくなります。

物流DXとは、機械化やデジタル化によって今の物流の作業を改善し、さらに物流のこれまでのあり方そのものを変える取組のことです。DXは「デジタルトランスフォーメーション」の略です。

物流DXというと、ロボットや自動運転などの新しい技術が思い浮かびますが、荷主にとっての入口はもっと手前にあります。この記事では、国の定義を確認したうえで、物流効率化法との関係と、荷主と物流統括管理者(CLO)が何から始めればよいかを整理します。

物流DXの国の定義

物流DXという言葉は、国の総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)で定義されました。大綱は、機械化やデジタル化を通じて既存のオペレーションを改善し、働き方の改革につなげるとともに、これまでの物流のあり方を変革する取組を「物流DX」と総称するとしています。

大綱は、物流の機械化・デジタル化によって輸送情報やコストなどを「見える化」することが、物流のビジネスモデルそのものの革新につながるとし、物流DXを進めるうえで物流の標準化は必要不可欠だとしています。標準化の例としては、パレット、外装のサイズ、伝票、配送のコードなどが挙げられています。

デジタル化・標準化・DXの関係

観点 内容 例
標準化 荷物の形やデータの形式を、企業をまたいでそろえる 標準仕様のパレット、物流情報標準ガイドライン
デジタル化・機械化 紙や人手の作業を、データや機械に置き換える 予約受付、事前出荷情報(ASN)を使った検品、自動倉庫
DX データを使って、取引条件や物流の仕組みそのものを変える データにもとづく発注条件の見直し、企業をまたぐ共同輸配送

この表は、関係を理解するためにAPTが整理したものです。国が定めた順番ではなく、実際にはそれぞれの取組を並行して進めることもあります。国の基本方針は、物流標準化を、自動化・機械化・デジタル化・省人化などの前提と位置づけています。

2026年3月の新しい大綱での位置づけ

2026年3月31日に閣議決定された総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)は、2030年度までを物流革新の「集中改革期間」とし、「物流標準化と物流DX・GXの推進」を柱の1つにしています。主なポイントは次のとおりです。

  • 標準仕様のパレットと物流情報標準ガイドラインのさらなる普及・活用を図る
  • 複数の荷主・物流事業者の連携・協働に向けた取組を、物流統括管理者(CLO)が主体となって進める
  • トラック予約受付システムなどが、荷主や倉庫事業者ごとに別々の会社のシステムで、トラック事業者の負担になっている「多画面問題」について、物流データの標準化を通じたシステム間の連携を促す

大綱は、次のような指標も掲げています。

指標 現状 2030年度
物流データの標準化などで、複数の事業者と連携している荷主の割合 26%(2025年度) 50%以上
物流情報標準ガイドラインに準拠したシステム・サービスを提供する事業者の数 13事業者(2025年12月時点) 50事業者
庫内作業の自動化に取り組んでいる倉庫事業者の割合 12%(2025年度) 20%

物流効率化法に出てくるデジタルの取組

2025年4月から、すべての荷主に、荷待ち時間・荷役等時間の短縮や積載効率の向上に努める義務(努力義務)がかかっています。荷主の判断基準とその解説書には、次のようなデジタルの取組が出てきます。

場面 判断基準・解説書の内容
荷待ち時間の計測 受付簿などの記録からの集計のほか、トラック予約受付システムの記録や、トラック事業者のデジタルタコグラフの情報を使う方法。休憩時間を正確に除くにはデジタルタコグラフの情報が有効
荷待ち時間の短縮 トラック予約受付システムの導入と、適切な活用
積載効率の向上 配車・運行計画を作るシステムの導入などによる、配車計画・運行経路の最適化
荷役の時間の短縮 事前出荷情報(ASN)を使った伝票レス化・検品レス化。バーコードやハンディターミナルの活用
実効性の確保 デジタル技術などを使った効率的な方法での状況の把握。物流データの標準化による、関係する事業者との連携

国は「システムの導入は手段」としている

判断基準の解説書は、システムの導入は手段であり、システムを導入しなくても最適化ができるなら、導入そのものが求められるものではないとしています。トラック予約受付システムについても、単に導入するだけでなく実際に荷待ち時間の短縮につながる活用が必要で、輸送の頻度が低い拠点では費用対効果が低い場合もあるとしています。

物流DXは、システムを入れることが目的ではありません。何を減らしたいのか、どのデータがあれば判断できるのかを先に決めることが大切です。

CLOに求められるデジタルの知見

法律上、物流統括管理者(CLO)は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある人から選ぶ必要があります。部門をまたいで判断・調整できる立場であることが前提で、そのうえで国の手引書は、経営幹部クラスが望ましく、デジタルの知見も重要だとしています。CLOの業務には、情報処理システムなどの設備の整備や、データなどの標準化に関する計画の作成・実施・評価も含まれます。CLOの業務の全体は物流統括管理者(CLO)とはで解説しています。

荷主・CLOが物流DXを始める手順

国の資料と事例集をもとに、APTが整理した進め方の例です。法令で決められた手順ではありません。

  1. 自社のモノの流れを把握する:経済産業省のCLO取組事例集は、新任のCLOがまずやることとして、実際のモノの流れ、関わる部署、委託先、契約の形を整理することを挙げています
  2. データを同じ物差しで見える化する:事例集は、定義と算定のルールをそろえた「同じ物差し」での見える化を勧めています。まずは拠点ごとの荷待ち時間・荷役等時間から始めます(荷待ち時間の計測方法)
  3. データの定義をそろえる:まず社内で、時刻、単位、拠点の名前などの定義をそろえます。取引先とやりとりする出荷や運送のデータは、物流情報標準ガイドラインの項目と使える範囲を確認し、合わせられるところから合わせます
  4. 仕組みは効果と費用で選ぶ:予約受付、事前出荷情報(ASN)、配車の仕組みなどを、減らしたい時間や費用に対して見合うかで選びます。取引先のトラック事業者の負担(多画面問題)にも配慮します
  5. データで取引条件を見直す:見える化したデータをもとに、発注のロットや曜日、時間指定などを、社内の部門や取引先と見直します(物流改善の進め方)
  6. 自動化・機械化を判断する:作業の流れを見直して標準化したうえで、効果の高いところから自動化・機械化を検討します

データの入力、集計、見直しの判断をそれぞれ誰が担うかも、最初に決めておきます。

進め方の例:入荷の待ち時間を減らす

  1. 受付の時刻、荷降ろしを始めた時刻、終わった時刻を、トラックごとに記録する
  2. 待ちが集中する曜日や時間帯、取引先を集計する
  3. 発注の曜日や予約の枠を、社内の部門や取引先と調整する
  4. 変える前と同じ条件で、待ち時間を比べる

これは国の資料をもとにAPTが作った例で、特定の企業の実績ではありません。

国の事例集に載っている物流DXの事例

経済産業省の「CLO取組事例集 物流改革の実践と成果」(2026年2月時点の情報)には、荷主の取組が載っています。

  • まずは可視化から始めた例(梅の花グループ):企業の規模からすぐにシステムを入れることはできないため、「まずは可視化から」を合言葉に、Excelなど自社でできる手段で最低限のデータを集めることから始めています
  • 入荷の待ち時間をデータで減らした例(日本アクセス):入荷管理のシステムで、運送事業者ごとの待機時間や荷降ろしの時間を把握し、そのデータをもとに発注ロットの見直しやパレット単位の発注、発注曜日の集約を進めています。「1時間以上の入荷待機」の発生率は、2023年12月の4.4%から2025年9月には1.4%に下がっています
  • 作業を見直してから自動化した例(アルペン):今の業務に合わせて設備を入れるのではなく、あるべき要件から業務の流れを作り直し、標準化・簡素化したうえで自動化を進めています。投資は効果の高い領域に絞り、回収期間は原則5年(最長7年)を目安にしています

3つの例からは、現状の把握、取引条件の見直し、作業の流れの標準化など、自社の課題に合わせて始めるところを選ぶことが大切だと分かります。なお、回収期間の目安はアルペンの社内の基準で、一般的な投資の基準ではありません。

将来に向けた国の取組

国は、より長い目で見た物流DXも進めています。荷主が今すぐ対応するものではありませんが、拠点や設備の計画を立てるときの前提になります。

  • フィジカルインターネット:規格をそろえた荷物を、複数の企業が倉庫やトラックを共有して運ぶ仕組みです。国は2040年度の実現を目標にしています(フィジカルインターネットとは)
  • 共同輸配送:大綱は、データ連携を土台に、多くの企業が参加する共同輸配送の実現を目指すとしています(共同配送とは)

倉庫内の設備・システムの見直しをAPTに相談する

物流DXの最初の一歩は、今の拠点でどんなデータが取れるかを知ることです。設備やシステムを新しくしなくても、今あるものから必要なデータを取り出せる場合があります。

APTは、メーカーを問わない物流エンジニアリング会社として、倉庫の課題の整理から、既設の自動倉庫やコンベアのリニューアル、倉庫管理システム(WMS)・設備の制御システム(WCS)の更新まで支援しています。既存の設備やシステムから出荷・作業のデータを取れるか、更新せずにつなげられるかの整理からご相談いただけます。進め方の実例は導入事例をご覧ください。

よくある質問

物流DXとは何ですか。
国の総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)は、機械化やデジタル化を通じて既存のオペレーションを改善し、働き方の改革につなげるとともに、物流のこれまでのあり方を変革する取組を「物流DX」と総称しています。2026年3月に閣議決定された新しい大綱でも、物流標準化とあわせて物流DXを推進するとしています。
物流効率化法で、システムの導入は義務ですか。
いいえ、義務ではありません。荷主の判断基準の解説書は、システムの導入は手段であり、システムを導入しなくても配車計画などを最適化できれば、導入そのものが求められるものではないとしています。トラック予約受付システムも、輸送の頻度が低い拠点では費用対効果が低い場合があるとしています。
荷待ち時間は、システムで測らなければいけませんか。
いいえ、受付簿などの記録から集計する方法もあります。ただし判断基準の解説書は、トラック予約受付システムの記録や、トラック事業者のデジタルタコグラフの情報を使う方法も示しており、休憩時間を正確に除くにはデジタルタコグラフの情報が有効だとしています。
物流情報標準ガイドラインとは何ですか。
運送計画や出荷の情報など、企業の間でやりとりする物流データの形式をそろえるための国のガイドラインです。内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)の「スマート物流サービス」で策定され、2025年2月に ver.3.00 に改訂されました。荷主の判断基準の解説書でも、物流データの標準化の目安として示されています。
CLOにデジタルの知識は必要ですか。
法律上、物流統括管理者(CLO)は、事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある人から選ぶ必要があります。そのうえで国の手引書は、経営幹部クラスが望ましく、デジタルの知見も重要だとしています。CLOの業務には、情報処理システムなどの設備の整備や、データ等の標準化に関する計画づくりも含まれます。一方、経済産業省のCLO取組事例集は、CLOは必ずしも物流の専門家である必要はなく、社内外の関係者を巻き込んで合意をつくる役割が重要だとしています。
中小規模の荷主でも、物流DXに取り組めますか。
はい、取り組めます。経済産業省のCLO取組事例集では、システムの導入が難しい企業が「まずは可視化から」を合言葉に、Excelなど自社でできる手段で最低限のデータを集めることから始めた例が紹介されています。
新しい総合物流施策大綱では、物流DXについてどんな目標がありますか。
2026年3月の大綱は、物流データの標準化などで複数の事業者と連携している荷主の割合を、2025年度の26%から2030年度に50%以上にする指標を掲げています。物流情報標準ガイドラインに準拠したシステム・サービスを提供する事業者を、13事業者(2025年12月時点)から50事業者に増やす指標もあります。

出典

制度の内容の最終確認日:

制度の内容は変わることがあります。最新の情報は出典のページでご確認ください。

自社の拠点に当てはめて考えたいときは

現状を伺い、優先して確認すべき拠点・データ・改善テーマを整理します。資料の準備は不要です。