昨今の物流業界は、少子高齢化による労働力不足や消費者ニーズの多様化など、業界が直面する課題は山積しています。こうした状況の中、国が推進する物流の効率化を目的に策定された物流総合効率化法が注目を集めています。
そこで本記事では、物流総合効率化法の概要や認定を受けるメリットなどを徹底解説します。また、昨今注目されているCLOの役割について詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
物流総合効率化法とは
流通業務の総合化及び効率化の促進に関する法律(通称:物流総合効率化法)は、物流の効率化や環境問題への対応を目的として2005年に施行された法律です。国土交通省が主体となり、流通業務の効率化を支援するための法律となっています。
物流業務を合理化して効率的な輸送・流通を推進するため、認定事業者は補助金や税制優遇を受けることができます。
物流総合効率化法が制定された背景と目的
少子高齢化が進む日本では、労働力不足が深刻化しています。特にトラックドライバーなどの人材不足が顕著で、効率的な物流体制の確立が急務となっています。また、温室効果ガスの削減が求められる昨今において、物流業界が排出する二酸化炭素(CO2)は環境問題への課題として注目されています。
その他にも、オンラインショッピングの普及によって消費者のニーズは年々多様化しており、より早くより正確な配送を実現させなければなりません。こうした課題を抱えている物流業界では、効率的な取り組みが不可欠といえます。
このような背景からも、物流の合理化や環境負荷の低減、産業全体の競争力強化を目指して国が主導する形で物流総合効率化法が制定されたというわけです。
物流総合効率化法の認定メリット
物流総合効率化法の認定メリットは以下のとおりです。
- 補助金や税制優遇措置が受けられる
- 労働力不足が解消できる
- 効率化によるコスト削減が期待できる
- 環境負荷の低減が可能
ここからは、上記に挙げた各メリットの中身について詳しく解説します。
補助金や税制優遇措置が受けられる
認定を受けた企業には、補助金や税制優遇措置が受けられるメリットがあります。具体的には、物流の効率化計画を策定する費用や物流運行にかかる経費などに対して補助金が支給されます。
また、法人税の減免や固定資産税の軽減などの税制優遇措置も受けることができます。これによって企業は投資の負担を軽減できるため、さらに物流業務の効率化に専念できるメリットがあるわけです。
労働力不足が解消できる
物流業務の効率化が進むことで作業の省力化が期待できるので、労働力不足の解消につながるメリットがあります。たとえば、自動倉庫システム(WMS)の導入やロボットを活用したピッキング作業の自動化などにより、人手を減らしつつ効率的に作業を進めることが可能です。
配置する人数が少人数でも高いパフォーマンスを維持できるので、物流業界で深刻化している人手不足の問題にも対応できるでしょう。
効率化によるコスト削減が期待できる
物流業務の効率化を実現させることで、さまざまなコストを削減できるメリットもあります。たとえば、輸送網の集約や配送の共同化により配送効率が向上するため、燃料費や人件費などを削減できます。
また、在庫管理システムや倉庫管理システムなどの物流システムを導入することによって、無駄な在庫を抑えて適正在庫を維持することができます。そのため、全体的な物流コストが抑えられる効果も期待できます。
環境負荷の低減が可能
物流業務の効率化によって、環境負荷の低減にもつながるメリットがあります。たとえば、モーダルシフト(トラックから鉄道や船舶への輸送手段の切り替え)やEV車両の活用、輸送網の最適化などによってCO2排出量の削減を図ることができます。
これによって企業は環境にも配慮した経営姿勢を示すことができるので、企業イメージの向上にも寄与するメリットがあります。
物流総合効率化法に基づく対象となる事業
物流総合効率化法に基づく対象となる事業は以下のとおりです。
- モーダルシフト
- 輸送網の集約
- 輸配送の共同化
ここからは、対象となる上記の各事業について詳しく解説します。
モーダルシフト
モーダルシフトとは、環境負荷の少ない輸送手段へ切り替える取り組みを指します。具体的には、従来のトラック輸送から鉄道や船舶へ移行することで、CO2排出量の削減とエネルギー効率の向上が期待できます。
鉄道や船舶は一度に大量の貨物を運べるため、効率が良く環境への負荷が抑えられるわけです。また、輸送コストの削減以外にも運転手の負担軽減につながるため、省人化における労働力不足の解消も期待されています。
輸送網の集約
輸送網の集約は、複数の拠点を集約して輸送ルートを最適化し、効率的に商品を配送するための取り組みです。たとえば、同じ地域や方向に向かう荷物をまとめることで、トラックの配送効率が向上するため、物流コストとCO2排出量の削減が期待できます。
また、物流拠点の集約により在庫管理も最適化できるので、リードタイムの短縮にもつながるでしょう。このように輸送網の集約によって業務効率が改善するため、人件費の削減にもつながるメリットがあります。
輸配送の共同化
輸配送の共同化は、複数の企業が同じ物流ルートや倉庫などを共有し、配送を効率化する取り組みです。従来、企業ごとに個別のトラックや配送ルートを用いていた場合、積載率にムダが生じるなど、コストがかさむ原因となっていました。
一方で、輸配送の共同化によって各社の荷物をまとめて運ぶことで、トラック1台あたりの積載率を高め、配送効率を向上させることが可能です。また、共同化によって配送車両の総数が減るため、CO2排出量が削減されて環境に配慮した物流が実現できます。
話題のCLO(Chief Logistics Officer)とは?
最近注目を集めているCLO(Chief Logistics Officer)は、物流業務を含むサプライチェーンマネジメント全体の効率化や環境対応を推進するリーダー的な役割を果たすポジションです。CLOは、物流の最適化やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進、環境に配慮した物流体制の構築において重要な役割を担います。
CLOの具体的な役割の一部として以下があげられます。
- 物流の効率化
- 環境負荷の軽減
- デジタル化の推進
このようにCLOは、物流業務の効率化によって輸送コストの削減や配送の最適化を目指します。また、EV車両の導入やモーダルシフトの推進など、サステナブルな物流体制を構築するのもCLOの重要な役割といえるでしょう。
その他にも、自動倉庫システムやIoTを活用し、物流データを分析して効率向上を図ることもCLOが実行すべき内容になります。
以下の記事ではCLOについて詳しく説明しております。
CLO(物流統括管理者)とは?義務化に対応するためのポイントを解説
まとめ
物流総合効率化法は、労働力不足や環境問題に対応し、効率的な物流を実現するために設けられた法律です。認定を受けることで補助金や税制優遇を受けられるため、業務効率化によるコスト削減や環境負荷の低減が期待できます。
また、CLOといった物流の専門的リーダーの存在が、企業の物流効率化や環境対応において今後さらに重要な役割を果たしていくでしょう。物流総合効率化法を活用し、持続可能な成長を目指すための物流改革に取り組むことが重要になってきます。
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