
物流倉庫では、入出荷作業や在庫管理など日々多くの業務が発生しますが、「作業効率が悪い」「誤出荷が多い」「人手不足で現場が回らない」といった課題を抱える企業も少なくありません。こうした問題を解決するために重要なのが、物流倉庫における現場の改善です。
そこでこの記事では、物流倉庫の改善がなぜ重要なのかを解説するとともに、実際に成果を上げた改善事例も紹介します。現場の生産性を高めたい方や、具体的な改善施策を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
APTの物流システム開発ソリューション「WMS・WCS・WES」
目次
物流倉庫の改善が重要な理由
物流倉庫の改善は、単に作業効率を高めるだけでなく、企業全体の競争力を左右する重要な取り組みです。近年は人手不足やEC市場の拡大により、限られたリソースで正確かつスピーディーな出荷対応が求められています。
そこでここからは、物流倉庫の改善によってどのような成果が得られるのか?具体的に解説します。
業務効率・生産性が向上する
物流倉庫を改善する最大の目的は、作業効率と生産性の向上です。動線を見直したり、ピッキングエリアを最適化したりすることで、1人あたりの作業量を大幅に増やすことができます。また、在庫ロケーションの明確化やWMS(倉庫管理システム)の導入により、在庫の検索時間や入力ミスを削減し、誤出荷の防止にもつながります。
作業の標準化を進めればスタッフごとの作業差も小さくなり、安定した生産性を維持できます。また、リアルタイムでデータを可視化することで、ボトルネックの特定や改善スピードも向上します。
労働環境・安全性が改善する
物流倉庫の改善は、作業効率だけでなく、労働環境や安全性の向上にも直結します。例えば、倉庫内の整理整頓を徹底し通路や作業スペースを確保することで、転倒・衝突などの事故リスクを減らせます。
また、重い荷物の運搬を自動搬送機(AGVやAMR)に任せることで、作業員の身体的負担を軽減し、腰痛や過労といった労災の防止にもつながります。安全教育や標準作業手順書(SOP)の整備を進めれば、経験の浅いスタッフでも安心して作業できる環境を構築できます。
顧客満足度が向上する
物流倉庫の改善は、最終的に顧客満足度の向上にもつながります。出荷精度を高め、リードタイムを短縮することで、納期遵守率が上がり、取引先やエンドユーザーの信頼を得やすくなります。
また、在庫状況を正確に把握できる体制を整えれば、欠品や発送遅延のリスクも減少します。繁忙期でも安定した出荷を維持できるようになれば、リピート率の向上や新規取引の獲得にも直結します。こうした一連の改善が、企業のブランド価値向上にも大きく寄与します。
物流倉庫を改善する際のポイント

物流倉庫の改善を効果的に進めるためには、場当たり的な対応ではなく、現場の課題を正しく把握し、体系的に改善策を実行することが大切です。整理整頓の徹底やレイアウト最適化といった基本的な取り組みから、マテハン機器・WMSなどのシステム導入まで、改善の切り口は多岐にわたります。
そこでここからは、実際の改善活動を行う際に意識すべき5つのポイントを紹介します。
整理整頓(5S活動)の徹底
物流倉庫の改善を進めるうえで、最も基本でありながら効果が大きいのが5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底です。不要な在庫や備品を排除し、必要なものを定位置に置くことで、探す手間や移動時間を減らせます。
加えて、通路や作業スペースを常に清潔に保つことで、事故やトラブルの発生も防げます。5Sを継続的に実施すれば、倉庫全体の見える化が進み、誰が作業しても同じ品質を維持できる環境が整います。現場全員が改善意識を共有し、日常的に5Sを習慣化することが、持続的な効率化のポイントです。
関連:物流倉庫管理業務における「5S」とは?メリットや注意点を解説
レイアウト最適化
物流倉庫におけるレイアウト最適化は、作業効率を左右する重要な要素です。入荷から出荷までの動線を整理し、無駄な移動や滞留を減らすことで、1人あたりの生産性を大きく高められます。
例えば、出荷頻度の高い商品を出荷口付近に配置するゾーニングや、ABC分析に基づく棚割りを行うとピッキング作業の効率が向上します。また、フォークリフトや台車が通りやすい通路幅の確保、保管ラックの高さや棚間距離の見直しも効果的です。このように現場動線を数値化・可視化しながら継続的に改善していくことで、物流現場全体の最適化が実現します。
関連:倉庫レイアウトとは?作業効率を高める倉庫レイアウト改善の考え方や方法を解説
マニュアル化の推進
作業のマニュアル化は、属人化を防ぎ、誰でも一定の品質で業務を行える環境を作るために欠かせません。標準作業手順書を整備し、作業ごとの手順や注意点を明確化することで、教育時間の短縮やミスの削減につながります。
特に繁忙期には新規スタッフが多く入るため、マニュアルが整っていれば短期間で即戦力化が可能です。近年では、紙の手順書に加え、タブレットや動画を活用したデジタルマニュアルも普及しており、理解度の向上にも効果があります。マニュアルを定期的に更新し、改善内容を反映していくことが、安定した作業品質の維持に直結します。
マテハン機器の活用
物流倉庫の効率化を進めるうえで、マテハン機器の導入は非常に効果的です。自動搬送コンベアや垂直搬送機、パレットリフターなどを活用すれば、荷役作業の時間短縮と人的負担の軽減が可能になります。
近年はAMR(自律走行搬送ロボット)やGTP(自動棚搬送ロボット)のように、人が動くのではなくモノが人のもとに届く仕組みが注目されています。これにより、移動距離や待機時間が大幅に削減されるため、作業の安全性も向上します。マテハン機器を導入する際は、倉庫の規模や取り扱い商品に合った設備を選定し、既存システムとの連携を考慮することが重要です。
関連:WMSとマテハン連携で倉庫作業を改善!自動化のメリットと導入ポイントを紹介
WMSや各種システム導入
WMS(倉庫管理システム)や関連システムの導入は、物流倉庫の改善において欠かせない仕組みの一つです。入出庫や在庫、ロケーション情報をリアルタイムで可視化することで、誤出荷の防止や在庫精度の向上を実現します。従来の紙やExcelによる管理を脱却し、データベース化することで作業の標準化と属人化の解消が進みます。
また、TMS(輸配送管理システム)やERPとの連携により、倉庫単体ではなくサプライチェーン全体の最適化も可能です。IoTやAIを活用した需要予測や設備稼働分析を組み合わせれば、在庫過多・欠品リスクの低減にもつながります。システム導入は、現場改善の継続的な基盤となる取り組みです。
物流倉庫の改善事例
下着通販の白鳩様では、出荷量の増加に伴い倉庫業務が逼迫していました。APTの支援により、自動倉庫システム「AutoStore」とWMSを導入したことで、出荷効率と在庫精度が大幅に向上しました。
従来は出荷指示と同時にピッキングを行っていたため作業が分散していましたが、出荷指示タイミングを見直すことで作業効率を最適化。結果として、出荷量は1.6倍、棚卸誤差は1/5に改善され、リードタイムも半日短縮されました。
さらにトータルピッキング方式を採用し、SKU数が多い現場でも安定した出荷を実現。省人化と高精度なオペレーションを両立させた好例として、DXによる倉庫改善の効果を示しています。
関連:人気下着ストア「白鳩」がAPTと挑んだAutoStore導入とWMS内製化の全貌
まとめ
物流倉庫の改善は、単なる効率化ではなく、企業の成長力を高める重要な経営施策です。また、改善は一度きりの活動ではなく、データ分析や現場の声をもとに継続的に見直すことが重要です。
実際の事例でも、地道な改善を積み重ねた企業ほど生産性・安全性・顧客満足度で成果を上げています。自社の現場に合った方法で少しずつ改善を進めることが、強い物流現場をつくるポイントです。


