荷主の依頼を受けて商品を保管する営業倉庫では、保管する内容によって種類が分かれます。営業倉庫の種類によって施設要件も変わるため、倉庫業を始める際には周知しなければなりません。
そこで本記事では、営業倉庫の種類をわかりやすく解説するとともに、倉庫業法上分類されている倉庫の種類についても解説します。
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目次
営業倉庫とは?
営業倉庫とは、第三者の物品を保管する目的で運用されている倉庫のことを指します。営業倉庫は倉庫業法が適用されるため、国土交通大臣の認定登録を受けなければ営業することができません。
また、営業倉庫では、倉庫の種類別に定められている施設要件を満たす必要があるほか、適切な運用をするために倉庫管理主任者を選任しなければなりません。
保管物で変わる倉庫の種類【倉庫業法】
倉庫業法では、保管物の種類によって倉庫の分類がされています。第1類物品から第8類物品まで分かれているため、倉庫業を営む際には、どのような保管物を想定しているのか確認しなければなりません。なお、倉庫の種類・分類については、以下の表を参考にしてください。
第1類物品 | 第2類、第3類、第4類、第5類、第6類、第7類、第8類以外の物品 |
第2類物品 | 麦、でん粉、ふすま、飼料、塩、野菜類、果実類、水産物の乾品及び塩蔵品、皮革、肥料、鉄製品その他の金物製品、セメント、石こう、白墨、わら工品、石綿及び石綿製品 |
第3類物品 | 板ガラス、ガラス管、ガラス器、陶磁器、タイル、ほうろう引容器、木炭、パテ、貝がら、海綿、農業用機械その他素材及び用途がこれらに類する物品であっても、湿気または気温の変化により変質し難いもの |
第4類物品 | 地金、銑鉄、鉄材、鉛管、鉛板、ケーブル、セメント製品、鉱物及び土石、自動車及び車両(構造上主要部分が被覆されているものに限る)、木材(合板及び化粧材を除く)、ドラム缶に入れた物品、空コンテナ・空ビン類、れんが、かわら類、がい子・がい管類、土管類、くず鉄、くずガラス、古タイヤ類等野積で保管することが可能な物品 |
第5類物品 | 原木等水面において保管することが可能な物品 |
第6類物品 | 容器に入れていない粉状又は液状の物品 |
第7類物品 | 消防法第2条の危険物及び高圧ガス取締法第2条の高圧ガス |
第8類物品 | 農畜産物の生鮮品及び凍結品等の加工品その他の10度以下の温度で保管することが適当な物品 |
営業倉庫の種類
倉庫業法施行規則において、営業倉庫の種類は分かれています。また、営業倉庫の種類によって施設設備基準が変わるため、分類された要件を確認する必要があります。
そこでここからは、営業倉庫の種類と特徴について詳しく解説します。
一類倉庫
一類倉庫とは、最も施設設備基準が厳しい倉庫で「建屋型営業倉庫」とも呼ばれています。国土交通大臣の定める防火性能に適合している必要があるほか、防犯設備や鼠害防止設備も設置しなければなりません。
施設設備要件が厳しいことからも、ほとんどの物品を保管することができます。ただし、危険物や摂氏10度以下の物品、高圧ガスは対象外となります。
二類倉庫
二類倉庫とは、一類倉庫よりも若干施設設備基準が緩和されており、耐火性能を必要としていない倉庫です。そのため、燃えやすい保管物は対象外で、主にガラス類やセメントなどの保管ができます。
その他にも、飼料や原木、でんぷんに塩など、倉庫業法で定められている第2類物品から第5類物品に該当する物品を保管できます。
三類倉庫
三類倉庫とは、一類倉庫で定められている施設設備要件のうち、防水性能、防湿性能、遮熱性能、耐火性能、鼠害防止性能を省いた倉庫となります。そのため、湿度に弱い製品は保管することができません。
なお、主な対象保管物としては、陶磁器やタイルにガラス器など、倉庫業法で定められている第3類物品から第5類物品に該当する物品を保管できます。
野積倉庫
野積倉庫とは、建物で保管する倉庫ではなく、柵や塀で囲まれた区画の保管施設になります。塀や柵、鉄条網などで囲われた工作物もしくは土地でなければならず、消火設備や防犯用の照明設備などを設けなければなりません。
なお、主な対象保管物としては、鉱物や土石、鉄材にケーブルなど、倉庫業法で定められている第4類物品に該当し、雨風にさらされても良い物品を保管できます。
水面倉庫
水面倉庫とは、原木などを水面上で保管するための施設になります。別名「水面貯木庫」や「貯木庫」とも呼ばれており、水面上で保管することで木材が乾燥してしまうのを防ぐ役割があります。
なお、水面上で保管することからも、木材が流出してしまうのを防ぐ措置と、防犯上有効な照明設備を設置しなければなりません。
貯蔵槽倉庫
貯蔵槽倉庫とは、穀物や液体などを保管する倉庫施設になります。主にサイロやタンクなどが該当しますが、施設設備要件として周壁の側面や底面の強度が国土交通大臣の定める基準に適合していなければなりません。
なお、主な対象保管物としては、倉庫業法で定められている第6類物品に該当する液状の物品や、第1~2類物品のうちバラの物品(小麦やトウモロコシなど)に該当するものを保管できます。
危険品倉庫
危険品倉庫とは、危険物や高圧ガスを保管するための倉庫施設です。通常の保管施設とは違い、保管物の種類によって消防法や高圧ガス保安法、液化石油ガスの確保および取引の適正化に関する法律などの法定要件を満たさなければなりません。
なお、危険品倉庫については、施設設備基準として防火設備を設置しなければなりません。なお、主な保管対象物としては、倉庫業法で定められている第7類物品になります。
冷蔵倉庫
冷蔵倉庫とは、倉庫業法の定める第8類物品に該当する、水産武具や畜産物、農産品に冷凍加工食品などを中心とした、10度以下で物品を保存するための倉庫施設です。なお、施設設備要件として、内部と外部の連絡を取るために通報機などの設備を設置する必要があります。
また、冷蔵室の保管温度が常時10度以下に保たれるものとして、国道交通大臣の定める基準を満たしていなければなりません。
トランクルーム
トランクルームは、個人の物品を保管するための倉庫施設です。主に家財関連や書籍、ピアノなど、個人財産を保管対象としており、国土交通省が認定した施設に関しては「優良認定トランクルーム」として営業が認められます。
なお、優良認定トランクルームでは、寄託約款が定められており、保管物に対しても火災保険の保障が適用されます。
まとめ
倉庫業法が適用される営業倉庫には、第一類〜第三類倉庫、野積倉庫、水面倉庫、貯蔵槽倉庫、危険品倉庫、冷蔵倉庫、トランクルームなど、全部で9種類が存在します。保管する物品によっても営業倉庫の種類が変わるため、事前に該当する保管物を確認しましょう。
なお、営業倉庫には各種施設設備要件が定められているため、基準をクリアしなければ営業できません。入念な施設計画を立てた上で倉庫建設をしなければならないため、専門家に依頼することをおすすめします。