
物流業界では、取り扱う商品の種類や数量が増加する一方で、人手不足や作業ミス、保管スペースの不足といった課題も顕在化しています。こうした中で欠かせないのが倉庫管理ですが、具体的に何から始めれば良いのか迷っているという方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、そもそも倉庫管理とは何か?また現場で活用できる効率化の方法とは具体的に何があるのかを徹底解説します。倉庫業務に課題を抱えている方や、改善のヒントを探している方はぜひ参考にしてください。
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目次
倉庫管理とは?
倉庫管理は、物流業務の根幹を支える重要な役割を担っています。一方で、在庫管理と混同されやすく、その違いを理解していないと改善の方向性を誤ることもあるので注意が必要です。
そこでここからは、倉庫管理の基本的な役割や在庫管理との違いについてわかりやすく解説します。
倉庫管理の基本的な役割
倉庫管理とは、倉庫内における商品の入庫から保管、出庫に至るまでの一連の流れを統括的に管理する業務を指します。倉庫内では「入庫作業」「検品」「仕分け」「棚入れ」「在庫管理」「ピッキング」「梱包」「出荷」といった業務プロセスがあり、それぞれの業務品質が物流全体の品質を左右します。
倉庫管理の役割は、作業の効率化やコスト削減だけでなく、納期の遵守や誤出荷の防止、安全性の確保など多岐にわたりマネジメントを行います。そのため、営業倉庫業を営む事業者は、倉庫管理主任者を選任することが義務づけられています。
在庫管理の違いについて
在庫管理とは、主にどの商品がどれだけ存在するかを正確に把握し、適正在庫を維持することを目的としています。在庫過多になれば保管コストが増加し、逆に在庫不足になれば欠品による機会損失が発生します。
つまり、倉庫管理が倉庫内での人・モノ・作業の流れ全体をマネジメントすることであるのに対し、在庫管理は在庫数量や入出庫状況を最適化することに特化しているというわけです。
倉庫管理における課題とは?
倉庫管理には多くの課題が存在しますが、なかでも大きな問題のひとつとされているのが人手不足です。そのため、物流業界では慢性的に労働力が不足しており、限られた人員で効率的に業務を回す必要があります。
また、作業ミスや誤出荷の課題もあります。手作業でのピッキングや検品では、品番の取り違えが発生する可能性が高く、ヒューマンエラーに起因する顧客満足度の低下にもつながります。
その他にも、倉庫スペースの制約も課題のひとつです。スペースを有効活用できなければ、倉庫拡張や外部倉庫の利用など余計なコストが発生します。このような課題を解決するためにも、誰でも同じ精度で作業できる仕組みを整えることが大切です。
倉庫管理の効率化方法
物流コストの削減や納期遵守を実現するためには、倉庫管理の効率化が欠かせません。人手不足や誤出荷といった課題に直面する中で、限られたリソースを最大限に活用する工夫が必要になってきます。
そこでここからは、倉庫管理を効率化するための実践的な方法を詳しく紹介します。
ロケーション管理を最適化する
ロケーション管理とは、倉庫内の保管場所を体系的に整理し、どの商品がどの棚・どのエリアに置かれているのかを明確化する仕組みです。これを徹底することで、作業員は迷わず最短ルートで目的の商品にたどり着けるようになります。
ロケーション管理には「固定ロケーション方式」と「フリーロケーション方式」があり、前者は決まった棚に特定商品を置く方法、後者は空いている場所に順次保管する方法です。固定ロケーション方式は分かりやすい反面、スペース効率が低くなりやすいという課題があります。逆にフリーロケーション方式は保管効率が高いものの、システムでの管理が必須となります。
関連:ロケーション管理とは?管理方法やよくある課題の改善法を解説
倉庫内のレイアウトを改善する
倉庫内のレイアウト改善は、効率化に直結する取り組みです。例えば、入庫口から棚までの動線を短縮することで、作業時間を大幅に削減できます。また、出荷頻度の高い商品を出庫口付近に配置する方法も効果的です。
売れ筋商品や回転率の高い商品を優先的に取りやすい場所に置くことで、ピッキング作業の効率を高められます。レイアウト改善は一度行えば終わりではなく、商品の入れ替わりや業務量の変動に応じて定期的に見直すことが重要です。
関連:倉庫レイアウトとは?作業効率を高める倉庫レイアウト改善の考え方や方法を解説
ピッキングリストで効率化する
ピッキング作業は倉庫業務の中でも時間がかかりやすい工程です。ここで効率化を図る方法として、ピッキングリストの活用が挙げられます。ピッキングリストとは、出荷に必要な商品情報を一覧にまとめたもので、作業員が順番通りに商品を集められるように設計されています。
なお、近年では紙のリストだけでなく、ハンディターミナルやタブレットと連動したデジタルピッキングリストも普及しています。デジタル化によってリアルタイムで指示を更新でき、誤出荷のリスクを大幅に削減できます。また、エリアごとに担当者を分けるゾーンピッキングなどの方式を導入することで、さらに効率を高めることも可能です。
5S活動を徹底する
倉庫管理における基本として、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)があります。これは製造業やサービス業でも広く導入されている管理手法ですが、倉庫においても非常に有効です。
整理と整頓を徹底することで、必要なものと不要なものを明確化し無駄を省けます。清掃と清潔は、商品の破損や汚損を防ぐだけでなく、作業環境の改善にもつながります。そして、しつけによりルールを守る習慣を作業員全体に浸透させることが大切です。
5S活動は見落とされがちですが、実は効率化の土台となる取り組みです。倉庫内が整理されていれば、探す時間や移動の無駄が減り、結果として出荷スピードや精度の向上に直結します。
関連:物流倉庫管理業務における「5S」とは?メリットや注意点を解説
マテハン機器を導入する
マテハン機器(マテリアルハンドリング機器)は、荷物の搬送や仕分けを自動化・省力化する設備です。代表的なものには、コンベア、フォークリフト、自動仕分け機、AGV(無人搬送車)などがあります。
これらを導入することで、人手による負担を軽減し、作業効率を大幅に高めることができます。初期投資は必要ですが、長期的に見ればコスト削減と品質向上につながります。
WMS(倉庫管理システム)を活用する
倉庫管理の効率化には、ITシステムの導入が欠かせません。WMS(Warehouse Management System)は、入庫から在庫、出庫までの情報を一元管理できるシステムです。WMSを活用することで、在庫の場所や数量をリアルタイムで把握でき、ピッキングリストの自動生成や出荷ミスの削減につながります。
また、WMSはロケーション管理や棚卸の自動化にも対応しており、属人化の排除や作業標準化を実現できます。導入コストや教育には時間がかかりますが、中長期的には大きなメリットを生む方法です。
関連:WMS・WCS・WESの違いは?それぞれの機能について解説
まとめ
倉庫管理とは、倉庫内で行われる入庫・保管・出庫など一連の業務を効率的かつ正確に運営するための管理活動です。倉庫管理は人・モノ・作業全体をマネジメントすること、在庫管理は適正在庫を維持することに焦点を当てています。
倉庫管理には、人手不足や誤出荷、スペース不足、属人化といった課題が存在しますが、WMSの導入といった効率化策を組み合わせることで大幅な改善が可能です。効率化策をバランスよく実施し、倉庫業務全体の効率化とコスト削減を実現させましょう。