
物流業界では、以前からドライバーや倉庫作業員、配車担当者などの人手不足が課題となっていましたが、近年はその深刻さがさらに増しています。人材不足は一部の企業だけの問題ではなく、物流全体の持続性にも関わるテーマになっています。
そこで本記事では、物流業界における人材不足の要因と効果的な対策方法を解説します。人手不足の改善に取り組んでいる物流企業は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
物流業界で人材不足が起きる主な要因
物流業界の人材不足は、単純に採用がうまくいかないという話ではありません。人口構造の変化、労働条件の問題、現場負担の大きさ、そして物流需要そのものの増加が重なり合うことで、慢性的な人手不足が生まれています。
そのため、ここからは物流業界で人材不足が起きる主な要因を順番に解説します。
少子高齢化による労働力人口の減少
物流業界に限らず、日本全体で生産年齢人口の縮小が進んでいることは、人材確保を難しくする大きな要因です。総務省の統計では、2024年時点で65歳以上人口は3,625万人、総人口に占める割合は29.3%となっており、高齢化は過去最高水準に達しています。
つまり、今いる人材の確保だけでなく、将来的な世代交代まで見据えて採用と育成を進めなければ、現場の担い手がさらに不足する恐れがあります。若年層が減る社会の中では、ただ求人を出すだけではなく、選ばれる職場づくりまで含めた対策が欠かせません。
長時間労働と給与水準が低い
物流業界、とくにトラック運送分野で人が集まりにくい背景には、労働時間と賃金のバランスへの不満があります。労働負荷が高いにもかかわらず、それに見合う待遇が実感されにくい構造では、求職者にとって魅力が伝わりにくく、既存社員の離職にもつながりやすくなります。
また、長時間労働が常態化している職場では、生活リズムの不安定さや家族との時間の取りにくさも課題になります。そのため、単に募集人数を増やすだけでは不十分で、労働時間の短縮や評価制度の整備など、働き続けやすい環境を作ることが採用力にも直結します。
労働環境の負担が大きい
物流現場では、運転業務そのものだけでなく、荷待ち、荷役、積み降ろし、再配達対応、時間指定への対応など、付随業務の負担も非常に大きいです。特にドライバーは、運ぶ仕事だけでなく、待つ仕事や積み下ろす仕事まで担っているケースが多く、それが拘束時間の長さにつながっています。
こうした環境では、体力的・精神的な負担が蓄積しやすく、採用しても定着しにくい状況が起こりがちです。つまり、物流業界の人材不足は採用難だけでなく、現場環境によって離職が起きやすい構造そのものにも原因があります。
EC市場の拡大で物流需要も増加
人材不足が深刻化する一方で、物流需要は減っていません。EC利用が増えれば、それに伴って保管、仕分け、出荷、配送、再配達まで含めた物流負荷も増えるため、人手不足とのギャップはさらに大きくなります。
ECでは、小口配送や短納期対応、時間帯指定などが発生しやすく、従来の大量一括輸送とは異なる負担が現場にかかります。EC市場の拡大は物流業界にとって追い風である一方、人材不足を加速させる圧力にもなっているということです。
物流業界における人材不足への効果的な対策方法

人材不足を解消するためには、単に求人広告を増やすだけでは足りません。採用や定着、業務効率化、省人化を一体で考え、現場負担を減らしながら持続的に人を確保することが重要です。
そこでここからは、物流業界における人材不足への効果的な対策方法について解説します。
労働環境や待遇を見直す
最優先で取り組みたいのは、働く人にとっての魅力を高めることです。まずは拘束時間、休日日数、夜勤負担、手当の設計、評価制度、キャリアパスなどを見直し、働き続けやすい職場に変えていく必要があります。
例えば、荷待ち削減や配車の見直しによって実質的な拘束時間を短くするだけでも、現場の満足度は変わります。人材不足の局面では、採ること以上に辞めさせないことが重要であり、そのためには現場の不満を放置しない姿勢が欠かせません。
採用対象を拡大する
従来と同じ採用ターゲットだけを見ていると、人材確保はますます難しくなります。そこで重要になるのが、若年層だけでなく、女性、高齢者、未経験者、異業種からの転職者などへ採用対象を広げることです。
経験者前提では応募も集まりにくいため、未経験でも始めやすい教育内容や、資格取得支援、段階的な業務習得フローを示すことで、応募のハードルを下げやすくなります。人手不足が続く時代には、採用条件を狭くするのではなく、受け入れ体制を整えて対象を広げる発想が大切です。
モーダルシフトを導入する
モーダルシフトとは、長距離幹線輸送の一部をトラックから鉄道や内航海運へ切り替える取り組みです。長距離輸送をすべてトラックに依存していると、ドライバー不足の影響を直接受けやすくなりますが、幹線部分を鉄道や船へ振り分けることで、限られたドライバーを集荷・配達など必要な領域に集中しやすくなります。
モーダルシフトにはまだ拡大余地が大きく、実行できれば省人化と輸送安定化の両面で効果が期待できます。自社だけで完結しにくい施策ではありますが、幹線輸送の見直しを進めるうえで非常に重要な取り組みです。
共同配送を導入する
人材不足対策としては、複数企業が配送網を共有する共同配送も効果的です。個社ごとに空車や低積載のまま配送を繰り返すより、配送を共同化したほうが車両数や必要ドライバー数を抑えやすく、人手不足の影響も軽減しやすくなります。
共同配送は単なるコスト削減策ではなく、限られた人材で配送を回すための現実的な方法です。同一エリアへの納品が多い企業や、配送頻度が高い企業では、共同配送によってドライバーの拘束時間短縮や再配車の負担軽減にもつながりやすくなります。
ITツールや物流システムを導入する
人手不足への対応では、現場の作業そのものを減らす視点も欠かせません。配車管理システムや倉庫管理システム、TMSといったシステムを導入すれば、属人的な判断や手作業を減らし、少ない人数でも業務を回しやすくなります。
人が足りない状況では、経験者の勘や紙中心の運用に依存し続けるほど、現場負担が重くなります。ITツールの導入によって進捗の見える化や情報共有が進めば、教育期間の短縮やミスの削減にもつながり、結果として採用後の定着率向上にも結びつきます。
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自動化機器やマテハン設備を活用する
倉庫や物流センターでの人手不足対策としては、自動化機器やマテハン設備の活用も非常に重要です。現場に人を増やすだけではなく、そもそも人手がかかる作業を減らすことが必要です。
具体的には、自動搬送機、ソーター、垂直搬送機、デジタルピッキング、無人フォークリフト、パレタイザーなどを活用することで、仕分けや搬送、積み付けの省力化が進みます。採用難が常態化する中では、採れない前提で回せる現場を作ることが競争力につながります。繁閑差が大きい倉庫では、標準化と機械化を組み合わせることで、少人数でも安定した運用がしやすくなります。
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まとめ
物流業界の人材不足は、少子高齢化による労働力人口の減少だけでなく、長時間労働や待遇面の課題、荷待ちや荷役を含む現場負担の大きさ、さらにEC市場拡大による物流需要の増加が重なって起きています。
そのため、効果的な対策としては、労働環境や待遇の見直しによって定着率を高めることに加え、採用対象の拡大、モーダルシフト、共同配送、物流DX、自動化機器の導入を組み合わせて進めることが重要です。


