荷物を保管する倉庫には、2種類の契約方法が存在します。ひとつ目は「賃貸借契約」、ふたつ目は「寄託契約」になりますが、倉庫を利用する際にはこれら2種類の契約方法の違いについて理解しておかなければなりません。
そこで本記事では、倉庫契約における賃貸借契約と寄託契約の違いについて解説します。また、それぞれの料金による違いも解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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目次
倉庫の賃貸借契約と寄託契約の違い
倉庫契約を行う際には、賃貸借契約と寄託契約それぞれの契約方法の中身について知っておく必要があります。
そこでここからは、賃貸借契約と寄託契約の特徴を解説します。
賃貸借契約の特徴
倉庫の賃貸借契約とは、倉庫所有者である賃貸人から倉庫を借り受けます。この際、倉庫の占有面積を使用している対価に賃貸料を支払うことになります。
要するに倉庫の使用面積(倉庫一棟分や一部分)に対する契約となるため、基本的に庫内における荷物の管理(入出庫・保管・ピッキング等)は賃借人自らが行う必要があります。
寄託契約の特徴
一方で、倉庫の寄託契約とは、営業倉庫を運営する倉庫業者と契約をする方法です。具体的には、倉庫使用における賃借料ではなく、商品や荷物を保管するための保管料として支払う必要があります。
この保管料の中には、一般的に保管費やピッキング、入出庫に関わる費用などが含まれています。なお、寄託契約を行えるのは厳しい基準と倉庫業法に基づく登録をしている営業倉庫に限るため、無登録倉庫業者では利用できません。
倉庫の賃貸と寄託で変わる料金の違い
倉庫の賃貸借契約と寄託契約では、料金にも違いが出てきます。適切な運用をするためには、料金にどのような違いがあるのか理解しておきましょう。
そこでここからは、賃貸借契約と寄託契約それぞれの料金について詳しく解説します。
賃貸借契約の場合
賃貸借契約の場合、占有面積に対して賃貸料が発生します。一般的な倉庫賃貸借契約では、主に坪単価が使用されることが多い傾向にあります。
※500坪(6,000円/坪)の倉庫を借りた場合
500坪×6,000円/坪=3,000,000円/月
なお、坪単価にあたる費用は地域相場によっても変動があり、都市部のエリアは高くなるケースが多く、契約期間についても3年以上の長期契約になることが一般的です。
寄託契約の場合
寄託契約の場合、荷物を保管する対価として保管料が発生します。なお、この保管料には、以下のような料金体系が採用されています。
・個建て(単位:個)
・坪建て(単位:坪)
・容積建て(単位:1㎥あたり)
・パレット建て(単位:1パレット)
・重量建て(単位:kgまたはt)
・棚建て(単位:1棚あたり)
また、短期契約が可能な寄託契約では、1ヵ月単位の契約期間の他、以下のような形で3期制に分けているケースもあります。
・1期(1日から10日)
・2期(11日から20日)
・3期(21日から月末)
このような具合に契約期間が分かれており、どの契約期間の中でどれくらいの数量を保管したかによって費用が変動します。
例えば、1期あたりの保管料が50円/個の場合、以下のような算出方法になります。
3/1~3/10までの保管数:0
3/11~3/20までの保管数:0
3/21~3/末日までの保管数:300個
保管料:(0+0+300)×50円/個=15,000円
このように、寄託契約では決まった金額を支払うのではなく、荷物の量によって料金も変動する特徴があります。
賃貸借契約が向いている場合とは?
倉庫の賃貸借契約では、主に使用期間が長いケースや制限の少ない使用方法を求めている場合に有効です。
そこでここからは、これらのケースがなぜ賃貸借契約に向いているのか解説します。
倉庫の使用期間が長い
物流倉庫を確保するためには、業務内容や目的に合わせて契約方式を選ばなければなりません。その中でも特に、長期間の使用を想定して倉庫を選んでいる場合については、賃貸借契約が適していると言えるでしょう。
その理由に、多くの賃貸借契約では、最低契約期間が3年から5年で設定しているケースが多く、短期間での利用を想定していません。また、長期契約が前提なことはもちろんのこと、仕事量の増減にかかわらず一定の賃料を固定で毎月支払う形のため、必要コストも計算しやすいメリットもあります。
加えて、長期間で大量の荷物量を想定している場合についても、コストの変動幅が大きい寄託契約より、賃貸借契約の方が向いていると言えるでしょう。
制限の少ない使用方法
賃貸借契約では、倉庫のフロアや一棟まるごと借りる契約方式になります。倉庫内の使用方法については、約款で取り決めた範囲内であれば、自社の環境に合わせたレイアウト設計も可能です。
また、取扱商品に応じた設備機器の導入など、物流業務を最適化できるメリットがあります。また、荷物の入出庫も自由に行えるため、制限の少ない使用方法を求めている場合に賃貸借契約は最適です。
ただし、退去を行う際には、借り受けた時と同じ状態に戻さなければならないため、現状回復の義務が生じる点には注意しなければなりません。
寄託契約が向いている場合とは?
賃貸借契約とは反対に、寄託契約の場合は想定している倉庫の利用期間が短く、営業倉庫を活用したい場合に向いています。
では、なぜこれらの理由が寄託契約では向いているのかを詳しく解説します。
倉庫の使用期間が短い
寄託契約では、賃貸借契約のように費用が固定されることがなく、柔軟性の高い契約方式です。例えば、繁忙期などリソースが不足するシーズンのみ利用するなど、短期間の利用も問題ありません。
その他にも、季節変動が激しい商品を取り扱っている場合、賃貸借契約では対応しにくいデメリットがあります。一方で、寄託契約では変動の激しい商品を保管するのにも向いていると言えるでしょう。
短い期間でも柔軟に対応できる契約方式を目的としている場合、寄託契約を検討してみるのもおすすめです。
営業倉庫の活用
賃貸借契約とは違い、寄託契約を行える業者は営業倉庫の登録を受けた倉庫業者でなければなりません。この営業倉庫とは、国土交通大臣の登録を受けた倉庫のことを指し、倉庫業法の厳しい基準を満たすことで登録されます。
倉庫業法は、荷主側の利益を保護するための法律になるため、倉庫業法が適用される営業倉庫は、通常の倉庫よりも安心して利用できると言えるでしょう。例えば、営業倉庫では施設基準が設けられており、基準に適合しない施設は認定されません。
こちらの営業倉庫の種類、倉庫業法に定められる倉庫の種類をご紹介で営業倉庫の種類や法律を解説しています。
また、火災保険の加入が必須のため、保障の面でも安心と言えるでしょう。このように、営業倉庫はさまざまなリスク低減の基準をクリアした施設となるため、荷物を安心して預けることができます。
まとめ
賃貸借契約は、スペースや面積を借りるための契約方式で、寄託契約は荷物を預ける形での契約方式です。
賃貸借契約の場合、倉庫を自由に利用できて長期利用に向いています。一方で、寄託契約の場合、荷物量の変化によって預ける費用も変わってくるため、荷物超の変動が多い季節やスポット利用など、柔軟性の高い契約方式といえます。
いずれの契約方式もメリットとデメリットがあるため、自社の想定している用途や目的に適した契約方式の倉庫を選びましょう。
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