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物流改善の進め方:荷主ができる物流コスト削減と、荷待ち・積載・荷役の4つの改善策

執筆:株式会社APT公開日:

経営層向けの要点

  • トラックの運賃と、荷待ち・荷役の料金は上がる方向にあります。国の標準的な運賃は2024年3月の見直しで運賃表が平均約8%引き上げられ、30分を超える待機の料金に加えて、荷物の積込み・取卸しの料金の標準額も設けられました。
  • 荷主が自分で動かせる改善策は、物流効率化法の荷主の判断基準にまとまっています。発注のリードタイムと量(積載)、到着の分散と予約受付(荷待ち)、パレット化と検品の効率化(荷役)、契約と体制(実効性の確保)の4つです。
  • 進め方は「測る → 点検する → 手を打つ → 毎月見直す」です。まず荷待ち・荷役の時間と積載の状況を把握し、営業・生産・調達など物流以外の部門と一緒に、発注や納品の条件を見直します。

物流改善とは、モノを運ぶ・保管する・受け渡す流れのムダを減らし、費用と時間を下げる取組のことです。この記事では、物流を外部に任せている荷主の立場から、荷主が自分で動かせる改善策に絞って整理します。

荷主が動かせる改善策は、2025年4月からすべての荷主に努力義務がかかっている物流効率化法の「荷主の判断基準」に、具体的にまとまっています。この記事は、判断基準と国のガイドラインをもとに、何から手を付け、どう進めればよいかを説明します。

なぜ今、荷主が物流改善・物流コスト削減に取り組むのか

運賃と料金は上がる方向にある

国土交通省は2024年3月に、トラック運送の「標準的な運賃」を見直しました。標準的な運賃は、運送事業者が荷主と運賃を交渉するときの目安として、国が示すものです。主な見直しは次のとおりです。

  • 運賃表を改定し、平均約8%引き上げ
  • 荷主側の都合でトラックが30分を超えて待機した場合の待機時間料に加え、荷役の作業ごとの「積込料・取卸料」の標準額を設定
  • 待機時間料と積込料・取卸料の対象になる時間が合計2時間を超えた場合は、割増した単価
  • リードタイムが短い運送には「速達割増」。逆に、リードタイムを長く取った場合は割り引いた運賃も設定できる

実際の運賃・料金は運送事業者との契約で決まりますが、トラックを待たせる、ドライバーに荷役を頼む、急ぎの発注を出すといった取引条件は、費用として請求される方向にあります。逆に言えば、取引条件を見直すことが、荷主にとってのコスト削減の手段になります。

売上高に占める物流コストの割合

国の統計ではなく業界団体の調査ですが、日本ロジスティクスシステム協会の2025年度の物流コスト調査(主に2024年度の実績、有効回答205社)では、売上高に占める物流コストの割合は全業種平均で5.32%でした。回答した企業の平均で、業種によって差があります。

法律の努力義務と、国の目標

2025年4月から、規模にかかわらずすべての荷主に、積載効率の向上と、荷待ち時間・荷役等時間の短縮に努める義務(努力義務)がかかっています。国の基本方針は、次の目標を示しています。

  • 荷主などは、1回の受け渡しごとの荷待ち時間と荷役等時間の合計について、原則として1時間以内を目標とし、業界の特性などのやむを得ない場合を除いて2時間を超えないよう短縮する
  • 積載効率は、2028年度(令和10年度)までに、全国のトラック全体で**44%**への増加を目指す(重量だけでなく容積でも改善を図る)

制度の全体像は改正物流効率化法とはで解説しています。

進め方の全体像:測る → 点検する → 手を打つ → 毎月見直す

国の資料をもとに、APTが整理した進め方の例です。法令で決められた手順ではありません。

段取り やること 使える国の資料
1. 測る 拠点ごとに、荷待ち時間・荷役等時間と、トラックの積載の状況を把握する 判断基準の解説書(状況の把握)
2. 点検する 自社の発注・納品・時間指定などの条件が、原因になっていないかを点検する 中長期計画作成に当たってのポイント(課題の点検)
3. 手を打つ 下の4つの改善策から、効果と費用で選ぶ 判断基準、ガイドライン
4. 毎月見直す 社内の関係部門と運送事業者で、月1回など定期的に結果を確かめる 中長期計画作成に当たってのポイント(具体例)

1. 測る

国の「中長期計画作成に当たってのポイント」の点検表は、荷待ち・荷役の項目の最初に「荷待ち時間が発生しているか把握できているか」を置いています。判断基準の解説書も、荷主自身が時間を把握し、どの程度改善が必要かを知ることが重要だとしています。

荷待ち時間・荷役等時間を何から何までと数えるか、どの拠点・期間を測るかは、荷待ち時間・荷役等時間の計測方法で整理しています。

2. 点検する

「中長期計画作成に当たってのポイント」には、荷主が自分の取引を点検するための問いが並んでいます。積載効率の項目では、たとえば次のような問いです。

  • 不必要な短納期発注や急な発注変更をしていないか
  • 過度な頻回輸送を求めていないか
  • 月末・週末・繁忙期などに貨物量が集中していないか
  • 社内の他部門(営業・生産・調達など)が、物流の制約を考えているか
  • 長距離の輸送を、必要以上にトラックだけに頼っていないか

物流の問題に見えても、原因が営業や調達の取引条件にあることは少なくありません。点検は物流部門だけでなく、関係する部門と一緒に行います。

3. 手を打つ

点検で見つかった課題には、次の「改善策1〜4」から打ち手を選びます。最初は、起きる回数が多く、1回の時間が長く、自社で変えやすい課題から手を付けると、効果を確かめやすくなります。

4. 毎月見直す

打ち手ごとに担当の部門と確かめる数字(荷待ち時間、積載の状況、物流費など)を決め、月1回など決まった間隔で、変える前と同じ条件で比べます。会議の持ち方の例は、後の「社内体制」の節で紹介します。

改善策1:積載効率を上げる

積載効率は、トラックが運べる能力に対して、実際にどれだけ運べているかを示す割合です。判断基準の解説書では「積載率(最大積載量に対して積んだ重さの割合)×実車率(荷物を積んで走った割合)」とされ、空のトラックで走る区間も含めて計算します。荷物をまとめることに加え、帰りのトラックに荷物を積むことも改善になります。比重の小さい荷物は、重さではなく容積で把握することもできます。計算方法は積載効率とはで解説しています。

判断基準の解説書は、主に発荷主に当たる第一種荷主の取組として、次を挙げています。

  • リードタイムを確保する:リードタイムの短い発注を避け、納期に幅を持たせる。運送事業者が荷物をまとめて運べるようになります
  • 出荷量・入荷量を平準化する:年・月・週の単位で、量の多い時期と少ない時期の差をならす。難しい場合は、トラック単位・パレット単位など、納入の単位と回数をまとめる
  • 配車計画・運行経路を見直す:システムの導入は手段の一つで、導入そのものが求められるわけではありません
  • 社内の部門と連携する:開発・生産・販売・調達・在庫管理などの部門と調整する。解説書には、商品開発部門とパレットに合う外装を見直す例や、営業部門に発注ロットの目安を伝える例が載っています

主に着荷主に当たる第二種荷主には、第一種荷主から相談があったときに協力することが求められています。たとえば、翌日配送や発注の締め時間の延長の依頼を控える、納入の日時や回数の指定をゆるめる、といった取組です。

長距離の輸送では、トラックから鉄道や船に切り替えるモーダルシフトや、ほかの荷主と荷物をまとめる共同配送も選択肢になります。それぞれモーダルシフトとは、共同配送とはで解説しています。

改善策2:荷待ち時間を減らす

荷待ち時間とは、荷主や施設の都合で、トラックが荷物の受け渡しのために待機した時間です。トラックが早く着いた場合や受付の方法などで数え始めの時刻が変わるため、詳しくは荷待ち時間・荷役等時間の計測方法で整理しています。判断基準の解説書は、第一種・第二種の荷主に共通の取組として、次を挙げています。

  • 受け渡しの日時を分散させる:多くのトラックが同じ時間に集中して着き、順番待ちが生じている場合に有効です
  • 時間指定を見直す:特別な事情がないのに、「朝一」「午前必着」「午後一番」などの指定を慣習で続けている場合は、時間を指定しない、または時間の幅を広げることを検討します
  • トラック予約受付システムを使う:入れるだけでは不十分で、荷役にかかる時間を想定した予約枠を設けることが重要だとされています。予約枠と実際の作業時間がずれると、後のトラックが待たされるためです。輸送の回数が少ない拠点では、費用に見合わない場合もあります(詳しくはバース予約とは)
  • 寄託先の倉庫への発注を早める:荷物を預けている倉庫で起きる荷待ちも、荷主の努力義務の対象です。倉庫への入出庫の指示を早めに出します

寄託先の倉庫との役割分担は、倉庫業者に求められる対応と荷主の役割で整理しています。

改善策3:荷役・検品の時間を減らす

判断基準の解説書は、荷役の時間を減らす前に、そもそも運送以外の作業である荷役をドライバーに行わせるべきかを、まず検討することも重要だとしています。そのうえで、次の取組を挙げています。

  • パレットやカゴ車を使う:荷物を1つずつ手で積み降ろしする「バラ積み・バラ降ろし」をなくす。保管から荷降ろしまで同じパレットで運ぶ一貫パレチゼーションや、標準仕様のパレット(縦1.1m×横1.1m)の採用も挙げられています
  • 積み方を工夫する:降ろす順番を考えて積む。賞味期限や製造ロット、バーコードが外から見えるように積む
  • 検品を効率化する:事前出荷情報(ASN)を使った伝票レス化・検品レス化、ハンディターミナルや読み取りカメラなどの機器の導入。外装の軽い汚れや傷を理由にした受け取り拒否をやめるなど、検品の水準そのものの見直しも挙げられています
  • フォークリフトと作業員を適切に配置する
  • 荷さばき場(バース)を確保する:受け渡す荷物の量に見合った広さを確保し、整理整頓や利用のルールを見直す

機器や設備の導入にかかる負担については、必要に応じて、運送契約や発荷主・着荷主の間の契約で整理するよう求められています。

改善策4:コストを見える化し、契約で整理する

国のガイドライン(2023年6月)は、荷主と物流事業者が取り組むべきことを示しています。費用に関わる主な項目は次のとおりです。

  • 運賃と料金を別建てにする:運送の対価である「運賃」と、荷待ち・荷役など運送以外の作業の対価である「料金」を、別々に契約することを原則とする
  • 荷役作業の料金を誰が払うかを明確にする:ドライバーが行う荷役作業などの料金を支払う者をはっきりさせ、適正な料金を支払う
  • 運送契約を書面にする:書面またはメールなどの電子的な方法を原則とする。なお2025年4月からは、貨物自動車運送事業法により、運送を最初に頼む荷主(真荷主)とトラック事業者などが運送の契約を結ぶときは、運送の内容と対価、荷役などの作業の内容と対価、有料道路代などの料金、支払方法などを書いた書面を、互いに交付することが義務になっています
  • 有料道路の利用料は実費で払う:運賃とは別に、実費として支払う

判断基準の解説書は、物流サービスの水準に応じて物流コストの分だけ価格を上下させる「メニュープライシング」なども挙げています。商品の価格に物流費を含めて一律にする方法(店着価格制)では、急ぎの発注や小口の発注にかかる費用が取引先に見えません。物流費を見える化すると、取引先も効率のよい発注を選びやすくなります。

なお、2025年6月に公布されたトラック運送の法律(国土交通省は「トラック適正化二法」と呼んでいます)に、国が定める「適正原価」を下回る運賃・料金を制限する仕組みが入りました。施行は公布から3年以内の政令で定める日とされ、具体的な水準とあわせて、2026年10月27日時点で検討中です。

社内体制:CLOと、部門をまたぐ月1回の見直し

判断基準は、すべての荷主に、取組を進める責任者を選ぶことを求めています。特定荷主(取扱貨物の重量が年9万トン以上で、国の指定を受けた荷主)の場合は、物流統括管理者(CLO)が責任者です。特定荷主でない荷主の責任者には、役職や資格の指定はありません。

「中長期計画作成に当たってのポイント」には、次のような具体例が載っています。

  • CLOが中心になり、社内の関係部門で月1回、物流改善の会議を開く
  • 実際に運ぶ運送事業者と月1回打ち合わせ、積載効率の状況を把握する

発注のリードタイムや納品の時間指定は、営業や調達の部門が取引先と決めていることが多く、物流部門だけでは変えられません。CLOの役割は、こうした部門をまたぐ調整を進めることにあります。CLOの選任や業務は物流統括管理者(CLO)とはで解説しています。

特定荷主は、こうした取組を中長期計画と定期報告に書きます。書き方は中長期計画書の書き方と定期報告書の書き方で整理しています。

設備・システムの見直しが必要になる場面

取引条件や運用を見直しても、次のような場合は、拠点の設備やシステムが原因になっていることがあります。

  • ピッキングや荷揃えが出荷の時刻に間に合わず、トラックが待っている
  • バースや荷さばき場が足りず、到着を分散しても待ちが残る
  • 入荷の検品に時間がかかり、トラックからの取卸しが長引く
  • 古い設備の能力が足りない、または故障で止まることがある

設備の更新と延命をどう比べるかは物流設備投資の比較方法で、既存の自動倉庫を生かす方法は自動倉庫のリニューアルとはで整理しています。

倉庫内の設備・システムの見直しをAPTに相談する

取引条件や運用を見直しても、出荷の準備や検品が間に合わずにトラックを待たせている場合は、拠点の中の作業・設備・システムのどこに原因があるかを整理する必要があります。

APTは、メーカーを問わない物流エンジニアリング会社として、倉庫の課題の整理から、既設の自動倉庫やコンベアのリニューアル、倉庫管理システム(WMS)・設備の制御システム(WCS)の更新まで支援しています。運送や取引条件の交渉は行っていませんが、設備の更新を前提にせず、拠点の中の作業や設備が荷待ち・荷役の時間にどう影響しているかの整理からご相談いただけます。進め方の実例は導入事例をご覧ください。

よくある質問

荷主が物流コストを下げるには、何から始めればよいですか。
まず、自社の拠点で荷待ち時間・荷役等時間と積載の状況を把握することです。国の「中長期計画作成に当たってのポイント」の点検表も、荷待ち・荷役の項目の最初に「荷待ち時間が発生しているか把握できているか」を置いています。そのうえで、短い納期の発注や時間指定など、自社の取引条件が原因になっていないかを点検します。
荷待ちや荷役の時間は、どこまで短くする必要がありますか。
国の基本方針では、荷主などは1回の受け渡しごとの荷待ち時間と荷役等時間の合計(荷待ち時間等)について、原則として1時間以内を目標とし、業界の特性などのやむを得ない場合を除いて2時間を超えないよう短縮するものとされています。2023年6月の国のガイドラインでは「計2時間以内」とされていましたが、2025年の基本方針でより短い目標が示されました。
トラックの待機料は、いつから発生しますか。
国の標準的な運賃では、約束の場所と時間にトラックが着いてから、荷主側の都合で30分を超えて待機した場合に、待機時間料を受け取るとされています。運送事業者の都合で約束の時間より前に着いて待った時間は、対象外です。また、待機時間料と積込料・取卸料の対象になる時間の合計が2時間を超えると、割増した単価が示されています。実際の運賃・料金は、運送事業者との契約で決まります。
ドライバーに荷役や検品を頼む場合、費用はかかりますか。
はい、運賃とは別に料金として支払うのが原則です。国のガイドライン(2023年6月)は、運送の対価である「運賃」と、運送以外の作業の対価である「料金」を別建てで契約することを原則としています。頼む作業の範囲は、運送契約で明確にしておく必要があります。
トラック予約受付システムを入れれば、荷待ちの問題は解決しますか。
入れるだけでは不十分です。判断基準の解説書は、実際に荷待ち時間の短縮につながる使い方が必要だとし、荷役にかかる時間を想定した予約枠を設けることが重要だとしています。輸送の回数が少ない拠点では、費用に見合わない場合もあるとされています。
配車システムなどの導入は、法律で求められていますか。
いいえ、求められていません。判断基準の解説書は、システムの導入は手段であり、導入そのものが求められるものではないとしています。システムがなくても、配車計画や運行経路の見直しができれば構いません。
特定荷主でなくても、物流改善の責任者を置く必要がありますか。
はい、すべての荷主の努力義務として、判断基準で責任者を選ぶことが求められています。特定荷主の場合は物流統括管理者(CLO)が責任者になります。特定荷主でない荷主の責任者には、役職や資格の指定はありません。

出典

制度の内容の最終確認日:

制度の内容は変わることがあります。最新の情報は出典のページでご確認ください。

自社の拠点に当てはめて考えたいときは

現状を伺い、優先して確認すべき拠点・データ・改善テーマを整理します。資料の準備は不要です。