
海外マテハンを導入する際は、機器の仕様や安全性、部品供給、システム連携、保守体制などを事前に確認することが重要です。特に中国メーカーなどの海外製品は価格面で優位性がある一方、導入後にさまざまなトラブルが発生するケースもあります。
そこでこの記事では、海外マテハンを導入する際に起こりやすい6つのトラブルを解説します。実際に発生したトラブルと解決事例についても紹介しますので、海外製マテハンの導入を検討している方はぜひ参考にしてください。
海外マテハンにおけるトラブル6パターン
海外製品では、日本国内の製品とは設計思想や規格、サポート体制などの前提が異なることがあります。そのため、海外マテハンを導入する際には、機器そのものの性能や価格だけでなく、安全性や保守、システムとの連携なども含めて検討する必要があります。
そこでここからは、海外マテハンにおけるトラブル事例について詳しく見ていきましょう。
| No. | トラブル | 主な原因 | 対策 |
|---|---|---|---|
| 1 | 安全仕様が十分でない | 国内と海外の安全基準・仕様の違い | 安全基準や認証を事前に確認 |
| 2 | 部品の耐久性・供給に問題がある | 部品仕様や供給体制の違い | 交換部品の供給体制を確認・予備部品を確保 |
| 3 | 想定した動作と実際の動作が異なる | メーカーと導入企業の認識の違い | 要求仕様書の作成・PoCの実施 |
| 4 | 既存システムと連携できない | インターフェースや仕様の違い | 導入前にシステム連携を検証 |
| 5 | 保守・復旧に時間がかかる | 海外メーカーとの距離・対応体制 | 国内の一次対応体制を確認 |
| 6 | メーカーとの責任範囲が曖昧 | 役割分担・責任分界が不明確 | 責任分界図や契約書で明確化 |
1.安全仕様が十分でない
海外マテハンを導入する際に注意したいのが、安全仕様です。機器として搬送や保管などの基本的な動作を実現できたとしても、安全性や可用性、セキュリティといった「非機能」に関する仕様が十分とは限りません。
対策として重要になるのが、安全に関する認証の確認です。例えば、欧州には「CE」と呼ばれる認証があり、機械指令2006/42/ECなどに基づいて機能だけでなく非機能部分についても規定されています。
2.部品の耐久性が低く交換部品の納期も長い
海外マテハンでは、部品の耐久性と交換部品の納期が問題になることもあります。日本国内では機器を長期間使用することを前提として耐久性が重視される傾向がありますが、海外製品の中には部品交換を前提として設計されているものもあります。
そのため、導入前に交換部品の供給体制を確認しておくことが重要です。特に電源周りやワイヤー、ゴムベルト、油圧機器など故障や交換が想定される部品については、一定量を納入先で保管しておく方法があります。
3.想定していた機器仕様と実際の動作が異なる
海外マテハンでは、できると思っていた動作が実際にはできなかったというトラブルも発生します。原因の一つが、メーカー側と導入企業側における「できる」という認識の違いです。
こうした認識のズレを防ぐには、導入前に要求仕様書を細かく作り込むことが重要です。また、必要に応じてPoC(実証実験)を実施することも重要です。現在の条件だけでなく、想定されるリスクや将来的な拡張性まで含めて検証することで、導入後のミスマッチを防ぎやすくなります。
4.WMSなど既存システムとうまく連携できない
海外マテハンでは、機器単体の性能には問題がなくても、既存システムとの連携でトラブルが発生することがあります。例えば、マテハン機器をWMSなどの上位システムから制御しようとしても、必要なデータを取得できなかったり、想定していた方法で外部信号を受け取れなかったりするケースです。
システム連携の問題は、機器を導入した後に発覚すると、リカバリーやリプレイスに大きなコストと労力がかかります。そのため、導入前にシステム全体のアーキテクチャを設計しておく必要があります。
5.保守対応に時間がかかる
トラブルが発生した際、日本側としてはできるだけ早く原因を特定して復旧したいと考えます。しかし、海外メーカー側では決められた手順に沿って確認や調査を進めるため、日本側が求めている対応と噛み合わない場合があります。
こうしたトラブルを防ぐには、導入前にメーカーの保守対応方法を確認しておくことが重要です。日本語で説明できる担当者や、日本国内で一次対応できる代理店の存在も、海外マテハンを安定運用するうえで重要なポイントです。
6.メーカーとの責任範囲が曖昧になる
海外メーカーと取引する場合は、トラブル発生時の責任範囲を明確にしておく必要があります。例えば、機器が停止したら誰が対応するのか?といった点が曖昧なままでは、問題が発生してから責任の所在を巡ってトラブルになる可能性があります。
具体的な対策としては、責任分界図を作成し、メーカー・SIer・導入企業のどこが何を担当するのか整理しましょう。また、想定される運用上のリスクについても事前に洗い出し、トラブルが起きた場合の対応方針まで契約書へ盛り込んでおく必要があります。
海外マテハンの導入を検討している方は、実際のトラブル事例や導入前に確認しておきたいポイントをまとめた「海外マテハン失敗事例・チェックリスト」もご覧ください。
実際にあった海外マテハンのトラブル・解決事例3選

ここまで紹介してきたトラブルは、実際の物流現場でも発生しています。
ここからは、実際にどのような問題が発生し、どのように対応したのか、事例を基に紹介します。
1.無人フォークリフト導入時の安全仕様に関する事例
一つ目は、従業員約500名の印刷業企業における事例です。同社では物流自動化の一環として、AGFとハンドリフトを混在させて運用していました。しかし、AGFの走行路内部に人が入り込むことがあり、人とAGFが同じ現場で安全に作業できる仕組みが求められていました。
そこで、日本では未導入だった無人フォークリフトを導入するにあたり、機能安全規格への準拠を重視して機器を選定しました。最終的には、CEの機械指令2006/42/ECに準拠したAGFを導入した結果、人と機械の協働運用が可能になっただけでなく、業務効率化や監査対応などにもつながっています。
2.想定以上の保守費用が発生した事例
二つ目は、従業員約200名のEC企業における事例です。同社では、保管庫とピッキングを兼ねた物流機器を導入していました。しかし、導入後に機器ベンダーとの間で保守に対する認識の違いが明らかになり、想定以上の保守費用が発生しました。
メーカーに対して保守体制の変更や金銭的な補償を要請しましたが、メーカーからの回答は補填不可だったため、別の方法で問題解決を図っています。
具体的には、メーカーへ物流機器の拡張・追加を提案するとともに、システム改造を提案しています。そのうえで、システムを改造し、長期的に保守工数を削減できるシステムとオペレーションの設計を進めて改善しています。
3.曖昧な仕様によってシステム連携に問題が発生した事例
三つ目は、従業員5,000名以上の大手物流企業における事例です。同社では大規模な物流機器やシステムを複数運用していましたが、システムを発注する段階で要求が曖昧だったことに加え、元請けシステムベンダーも顧客の要求を十分に分析し、仕様へ落とし込めていませんでした。
そこでシステムベンダーを切り替え、コストの最適化を図った保守運用体制を構築し、システムそのものも組み直しています。
まとめ
海外マテハンは、物流現場の自動化を進めるうえで有力な選択肢の一つです。一方で、日本国内とは規格や設計思想、保守体制、契約に対する考え方などが異なる場合があるため、価格や基本性能だけで導入を判断するのは避けたほうがよいでしょう。
海外マテハンのメリットを活かしながら安定した物流運用を実現するためにも、導入時だけではなく、「導入後にどのように運用・保守していくのか」まで含めて計画することが大切です。
APTでは、メーカーに依存せず、お客様の課題や予算、運用環境に合わせてさまざまなマテハン機器の選定・導入をご提案しています。自動倉庫やAGV・AGF、コンベヤ、仕分けシステムなど、物流現場の自動化を検討している方は、ぜひAPTにご相談ください。
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