近年はeコマースの拡大とともに物流に対するニーズも高まっており、倉庫内の作業を効率化させる施策が大きな課題となっています。加えて、少子化問題に起因する人手不足も改善しなければならず、そこで注目を集めているのが「倉庫内業務の自動化」です。
倉庫の自動化にはいくつかの種類・方法があるため、改善するべき課題や問題に合わせた仕組みを採用する必要があります。しかし、現状自動化の仕組みを導入しておらず、これから導入を検討するといった場合には、どのような方法があるのかのイメージが掴めないことも多いでしょう。
そこで本記事では、物流倉庫の自動化で代表的な6つの方法について解説します。また、倉庫内業務の自動化に成功した国内の企業事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。
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物流倉庫の自動化とは?
物流倉庫における自動化とは、商品の入庫や検品、ピッキングや仕分けの作業、梱包に出庫など、一連の倉庫内作業を自動化させていく施策のことを指します。作業フェーズによって自動化させる内容も変わりますが、近年ではデジタル化技術が進んだことによって、多くの作業について自動化を適用させることが可能となりました。
また、eコマースや通販などの需要拡大や、物流業界や製造業界の慢性的な人手不足なども相まって、近年では倉庫内作業の自動化の必要性がより高まっています。今後eコマース需要は拡大の一途を辿り、人材不足が解消される見込みも薄いことを鑑みると、現在自動化の施策を取っていない倉庫も、なるべく早い段階で導入する必要があるでしょう。
物流倉庫を自動化するメリット
商品カテゴリー増加による商品管理の複雑化や慢性的な人手不足など、倉庫内作業のオペレーションには、さまざまな課題がつきものです。しかし、倉庫自動化の仕組みを導入することによって、これらの課題を解決することを初めとした、多くのメリットを得ることができます。
そこで、ここからは物流倉庫を自動化させるメリットについて確認していきましょう。
生産性が上がる
これまで人が作業していた内容を自動化させることによって、作業効率が大きく向上します。人の場合、労務規定によって長時間労働ができないため、稼働時間に限界が生まれます。
その一方、ロボットであれば時間を問わず稼働させることができ、シフトの調整や休憩時間の確保も不要なので、より効率的な作業を実現させることができます。また、冷凍冷蔵倉庫のような、人間では対応が難しい環境での作業も、ロボットを導入することで可能となり、より生産性を高めることができるでしょう。
業務品質が安定する
人が作業を行う場合、作業のクオリティが作業員のスキルや経験に依存してしまいがちです。そうなると、練度の低い作業員の場合にはミスが発生する可能性が出てくるため、それを防ぐためにルール策定や従業員の教育など、さまざまな対策をしなければなりません。
一方、倉庫内作業を自動化させれば、作業員のスキルや経験に依存する必要がなくなるため、人の手によるミス(ヒューマンエラー)を大幅に削減することができます。また、倉庫内の人の出入りを減らせるため、異物混入の可能性が減り、冷蔵倉庫の温度管理などもしやすくなるため、業務品質を安定させることができるでしょう。
省人化によるコスト削減
労働人口が減少している昨今では、人材確保が大きな課題です。しかし、人材を必要数確保することができたとしても、そこには人件費などの費用が当然かかってしまいます。
その点、倉庫の自動化を導入すれば、従来は人の手による作業だったものを機械に肩代わりさせることで、省人化を実現させることができ、人不足の課題は解決させることができます。また、人材を確保する際に必要となる、人材育成コストや求人コストなどの費用も大幅にカットすることができ、結果的に運営コスト全体の削減が期待できます。
安全性の向上
自動化することで、危険物や重量物の搬送、または危険な場所での作業を機械に任せることができ、重大な事故の発生を防ぎ、作業員の安全性を向上させることができます。
作業員の負荷軽減
倉庫を自動化することで、荷物の積み下ろし作業を機械に任せ、作業員の負荷軽減にもつながります。
物流倉庫自動化の課題
ここでは、実際に物流倉庫自動化システムを導入する際によくある課題について解説します。
システムの導入・メンテナンスコストがかかる
物流倉庫自動化には、WMS(倉庫管理システム)、自動ピッキングシステムや自動搬送ロボットなどを導入する必要があり、導入初期費用やメンテナンスコストがかかります。そのため、導入する前に、「システム導入後かかるコスト」と「自動化することで削減できるコスト」を計算してからシステムの導入を進めていきましょう。
従業員への研修が必要
新しいシステムを導入する場合には、業務フローが変わるため、従業員への研修が必要です。従業員はシステム導入の目的やシステム使用へのリテラシーが足りないと、業務が滞ってしまう可能性がありますので、マニュアルを作成して従業員への研修を徹底しましょう。
新しい体制の構築が必要
倉庫自動化システムの導入によって業務の流れが大きく変わる場合、倉庫内のレイアウト、部署の再編など、新体制の構築が必要となります。既に稼働中の物流倉庫の場合、通常業務と同時進行で行わなくてはいけないため、移行計画や対応を従業員に周知しましょう。
以下の記事では、物流コスト削減における課題や解決方法について詳しく説明しております。
物流コスト削減における課題は?理由や解決方法を紹介
物流倉庫を自動化する方法6選!
ひとくちに倉庫の自動化と言ってもさまざまな仕組みがあるため、何を導入すればいいのかわからないというケースも多いのではないでしょうか。
そこで、ここからは物流倉庫を自動化させる代表的な6つの方法を紹介します。
自動倉庫システム
自動倉庫システムとは、商品の入庫、保管、出庫までの一連の流れを一元管理し、自動化するための物流システムです。コンピュータによる制御を行うタイプが一般的なので、「オートメーションシステム」と呼ぶケースもあります。
自動倉庫システムの特徴はコンピュータ管理になることから精度の高い在庫管理や入出庫作業を実現できることです。取り扱う商品によって、自動倉庫システムの種類を選定する必要があります。
自動倉庫システムには、「パレット型自動倉庫システム」「バケット型自動倉庫システム」「フリーサイズ型自動倉庫システム」「移動棚型自動倉庫システム」「縦型回転式自動棚」など様々な種類があります。
以下の記事では自動倉庫システムについて詳しく説明しております。
自動倉庫システムとは?種類や選び方を解説
WMS(倉庫管理システム)
WMSとは「Warehouse Management System」の頭文字を取った略称で、日本語では「倉庫管理システム」と呼ばれています。入庫から出庫、在庫管理まで、倉庫内の運営をシステム側で一元管理するため、業務を効率化させることができます。
帳票の作成やラベルの発行機能も付いており、事務作業の効率化も図れるため、人件費削減にも大きく貢献します。また、返品のようなイレギュラーな在庫変化もシステム管理できるため、紙などによるアナログな管理に比べ、より正確な商品管理を実現させることが可能です。
以下の記事ではWMS(倉庫管理システム)の選び方について説明しております。
倉庫管理システムとは?それぞれの特徴と選び方のポイントを解説
デジタルアソートシステム(DAS)
デジタルアソートシステム(DAS)とは、デジタル表示器を用いてアソート向けの仕分け作業を支援するデジタルピッキングシステムです。
倉庫現場に応じてハンディターミナルや固定式/無線式/ゲート式などの表示器が用いられます。従業員はデジタル表示器の指示通りに仕分けをするため、視覚的に素早く作業を行えます。
従来のように紙のリストを持ちながら仕分け作業する必要がないため、仕分け作業の生産性が向上します。また、デジタル表示器に数量も表示されるので数量間違いなどのミスも削減できるメリットがあります。
以下の記事では、DASの導入メリット・デメリットについて詳しく説明しております。
DASとは?物流倉庫に導入するメリット・デメリット
デジタルピッキングシステム(DPS)
デジタルピッキングシステム(DPS)とは、デジタル表示器の指示に従って、商品を摘み取っていくピースピッキングシステムです。
DPSの主な仕組みは、バーコード等で情報を読み取ることで商品が保管されている棚のデジタル表示器が点灯する仕組みです。デジタル表示器を利用して視覚的に作業できるので素早く正確なピッキングを行うことができます。
DPSでは商品の保管場所(ロケーション)をシステムで制御するため、DPSを導入した場合、棚に設置されたデジタル表示器の位置を簡単に変更できません。
以下の記事ではDPSについて詳しく説明しております。
DPSとは?仕組みと物流倉庫に導入するメリットについて解説
自動ピッキングシステム
自動ピッキングシステムとは、作業を効率化させるためにロボットや機械を組み合わせたピッキングの仕組みです。人がピッキング作業をする場合には、ハンディーターミナルを用いて人単位でピックするのが一般的ですが、自動ピッキングシステムでは、自動倉庫システムなどと連携させることで、ケースやパレット単位でのピッキングが可能です。自動ピッキングシステムを導入することで、ピッキング担当者を配置するための人件費が削減できるうえに、処理速度も上がり、ヒューマンエラーなどに起因するピッキングミスも防止できます。
自動搬送ロボット(AGV・AMR・GTP)
自動搬送ロボットとは、商品の搬送をロボットに代行させ、搬送作業を自動化させる仕組みです。
自動搬送ロボットには床面などに設置した誘導体に沿った移動が可能な「AGV(Automatic Guided Vehicle)」、誘導体を設置せずとも自立走行が可能な「AMR(Autonomous Mobile Robot)」、棚ごとに商品を運搬することのできる「GTP(Goods To Person)」などの種類が存在します。それぞれに得意とする作業や場所が異なるため、用途や目的に合わせて導入しましょう。
●無人搬送ロボット:AGV(Automatic Guided Vehicle)
AGVは荷物を無人で搬送するためのロボットです。床や天井に設置された磁気テープなどの誘導体に沿って車両が走行します。AGV(無人搬送車)は誘導体に沿って走行する機器なので、事前に走行ルートを決めておく必要があります。走行ルートを決定する際には、安全性の観点からも障害物を避けて決定する必要があります。
以下の記事では、工場でのAGVの活用シーンについて説明しております。
工場でAGV(無人搬送車)を導入するメリットや活用シーンなどを解説
●自律走行搬送ロボット:AMR(Autonomous Mobile Robot)
AMRは誘導体無しで、AIやセンサーによる自立走行が可能な搬送用ロボットです。センサーによる自己位置推定と環境地図作成をすることによって、障害物を回避しながらの自律走行を実現させることができます。ロボット側で周辺環境の認識が行えるため、誘導体の設置も必要なく、レイアウト認識も短い時間で完了できます。
●棚搬送ロボット:GTP(Goods To Person)
GTPは、ピッキングを担当する作業者のいる場所や、棚入れをする場所まで直接荷物を運んできてくれるロボットです。棚搬送型ロボット」や「棚流動型ロボット」などとも呼ばれています。GTPロボットの動くことが可能な範囲は、あらかじめ設定されたロボット専用エリアに限られます。
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物流倉庫の自動化に成功した企業事例
物流倉庫を自動化する場合、すでに導入し成功している企業を参考にすることで、最新のトレンドや適切な活用法を学ぶことができます。
そこで、ここからは実際に物流倉庫の自動化に成功している企業の参考事例を紹介します。
Amazon
Amazonの物流倉庫では、Amazonが買収したロボットメーカー「Kiva Systems」によって開発された「Amazon Robotics Kiva」という自動搬送ロボットが導入されています。作業スタッフが目的の商品を選択することで、ロボットが該当商品を棚ごとスタッフの元まで搬送してくれます。その結果、倉庫内を人が歩いて移動する必要がなく、そのための移動スペースを省き、より効率的なストッキングを可能としました。
また、このロボットのおかげで作業員は移動する必要がなくなり、定位置で作業をすることができます。その結果、作業スタッフの業務負担が減り、ヒューマンエラーも大幅に減らすことができました。倉庫自動化の成功例として、ぜひ参考にしたいところです。
アスクル
アスクルの物流倉庫「ASKUL Value Center 関西(AVC関西)」では、省人化を目的にした自動搬送ロボットであるAGVと、ロボットアームによる自動ピッキングシステムが導入されています。
AGVには、パレット単位で搬送ができるGeek社製の「Geek+EVE M1000R」が導入されており、ピッキングシステムではMUJIN製のロボットコントローラーと、安川電機製のロボットアームが導入されています。
これら自動化施策によって、アスクルは倉庫内スタッフ10人の省人化に成功したほか、重量物の搬送の点でも省力化を実現しています。大手国内企業の成功例として、ぜひ参考にしてみてください。
APTでは、倉庫自動化に関するコンサルティングを行っています。1社1社に合わせた柔軟なご提案をいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
近年の物流倉庫では、労働人口の減少による慢性的な人材不足が大きな懸念材料となっているため、省人化施策が非常に重要な課題とされています。そんな中で注目されている倉庫の自動化ですが、自動搬送ロボットを筆頭にさまざまな自動化システムが存在します。
そのため、導入をする際には、現状で自社の倉庫が抱えている問題点を最も適確に解決できる方法で自動化しなければなりません。Amazonやアスクルなど、実際に倉庫の自動化に成功している企業事例を参考にしつつ、自社倉庫に最適な自動化システムを導入しましょう。
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